中国の大規模減税がもたらす影響について考える

 中国政府が米国との貿易戦争に対処するため、所得税や法人税の大規模な減税を進めています。この政策が効果を発揮するのかは分かりませんが、うまくいけば中国経済の体質転換が進み、日本にとってはプラスとなるかもしれません。

中国は典型的な途上国型経済だった

 中国はこれまで驚異的な経済成長を実現してきましたが、成長のドライブとなってきたのは、製造業による輸出と国内のインフラ投資です。輸出で外貨を稼ぎ、国内の設備投資を拡大することで、国民の所得を増やすというのは、かつての日本と同様、工業によって経済成長する国の王道ともいえるやり方です。

 中国社会はここ数年でかなり豊かになる一方、賃金の高騰から、低価格を売りに輸出攻勢をかけるというビジネスができなくなりつつあります。

 中国にとっては、内需をより活発にし、個人消費によって経済を成長させる欧米型経済にいかに舵を切るのかが課題ですが、インフラ投資をやめれば景気が冷え込む可能性があり、成長の維持と成熟化でどうバランスを取るのか苦慮してきました。

 こうしたタイミングで発生したのが米中の貿易戦争です。

 中国は米国に対して巨額の貿易黒字となっていますから、関税合戦となった場合には、輸出超過の中国が不利になります。もちろん米国も大きな影響を受けますが、輸出が大打撃となることを考えると中国側の損失は極めて大きいでしょう。

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貿易戦争の勃発が逆に中国経済の成熟化を促進?

 こうした事態を受けて中国政府は景気を維持するため、5兆円を越す大型減税を実施することになりました。家計の負担は確実に軽くなりますから、うまくいけば個人消費が大幅に拡大する可能性があります。

 この政策を検討している直接的な理由は貿易戦争の勃発による景気失速対策ですが、場合によっては中国経済の体質転換を促すきっかけとなるかもしれません。

 日本は本来であれば、中国など新興国とコスト競争するのではなく、米国や欧州のような成熟した内需型経済にシフトし、高付加価値なサービス立国を目指すべきでした。しかし残念なことに、経済の体質転換はあまり進んでおらず、輸出に頼る状況が続いています。

 しかし中国経済の内需拡大が進めば、中国はライバルというよりもむしろ製品を買ってくれるお客さんになる可能性が高まります。むしろその方が日本経済にとってはプラスの効果が大きいでしょう。

 また中国が内需中心型の成熟経済に移行した場合、全世界のマネーフローも大きく変わる可能性があります。
 
 これまで世界経済は米国の旺盛な消費によって回ってきましたが、ここに中国というもうひとつの消費が加わります。もちろん人民元の国際化という課題を乗り越える必要がありますが、場合によっては貿易戦争の勃発が、思わぬ形で世界経済の仕組みを変える結果となるかもしれません。