パート労働者の厚生年金対象拡大は何を意味しているのか?

加谷珪一の年金教室 第8回

 厚生年金に加入するパート労働者の適用範囲が拡大されるというニュースがありました。今回はこのニュースをもとに、パート労働者の厚生年金加入について説明したいと思います。

パート労働に従事するのは専業主婦が多かった

 企業に勤めて給与をもらっている人は基本的に厚生年金の対象ですが、パートのような短期労働者の場合、全員が厚生年金の対象というわけではありません。

 これまでパート労働者で厚生年金の対象者となっていたのは月収が8万8000円以上の人でした(このほか、勤務する会社の規模などいくつかの要件があります)。しかし新しい基準では、6万8000円以上の人も厚生年金となる見込みです。

 昭和から平成初期の時代までは、パート労働者の多くは専業主婦に近い人たちでした。つまり、家事の合間にちょっとだけ稼ぎたいというニーズを満たすのがパート労働だったわけです。専業主婦の場合、夫の厚生年金で妻の分の年金もカバーされますから、専業主婦世帯の妻は、厚生年金に入らない方が都合がよかったわけです。

 しかし、専業主婦世帯が大幅に減少し、夫婦共働きという世帯が当たり前になってくると、自身で保険料を負担しても厚生年金の方がよいと考える人が増えてきました。こうした状況を受けて、政府は厚生年金の加入対象の拡大に踏み切ったわけです。

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背景にあるのは年金財政の悪化

 政府が厚生年金の加入者を増やしたのは、年金財政の悪化を食い止めたいからからです。

 日本の公的年金は現役世代の保険料で高齢者を支える賦課方式ですから、現役世代からいくら徴収できるのかで財政状況が決まってしまいます。年金財政は年々悪化しているため、厚生年金の加入者を増やして、徴収する保険料を増やしたいと考えています。

 しかしながら、今回の対象範囲拡大は、場合によっては、一部パート労働者の賃金引き下げにつながるとの指摘も出ています。
 
 厚生年金の保険料の半分は企業が負担する仕組みですから、今回、対象範囲が拡大したことで、これまで保険料の負担をしなくてもよかった労働者の分まで企業は保険料を負担しなければなりません。

 企業の中には保険料負担の増加を嫌って、従業員の給与を引き下げるところも出てくるでしょう。経営状況が厳しい中小企業の場合には要注意かもしれません。

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