加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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変わる国際教育の考え方

 

 女性の社会起業家が創設した新しいインターナショナル・スクールが軽井沢に開校しました。グローバル人材を輩出する新しい試みとして、メディアの注目を集めています。
 この学校には、元ソニーの出井伸之氏など著名な財界人が支援を表明しているのですが、日本の国際教育をめぐる議論や財界人のスタンスも、ここ20年でずいぶんと変わったことを感じさせます。

女性社会起業家に財界人が続々支援
 新しく開校したのは「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢」。従来のインターナショナル・スクールの多くは、無認可か各種学校の認可しか受けていないものがほとんどで、日本の卒業資格を得ることはできません。

 同校は、学校教育法1条に基づく認可を得ており、日本の高校卒業資格を得ることができます。一方、カリキュラムは国際バカロレアに基づいて行われるため、日本の大学だけでなく、世界各国の大学に進学することも可能となります。

 海外から半数以上の留学生を受け入れる全寮制のインターナショナル・スクールとしては、日本で初めての1条認可校なのですが、インターナショナル・スクールで1条認可校となっているところは同校だけでありません。

 それにも関わらず、同校が大きな注目を集めているのは、同校の創設者が40歳の女性社会起業家であり、著名な財界人や外資系金融マンがこぞって支援をしているからにほかなりません。

 創設者の小林りん氏は、カナダの全寮制インターナショナルスクールに留学後、国際バカロレア資格を取得。東京大学経済学部を卒業し、モルガンスタンレーに勤務しました。
 その後、スタンフォード大学で教育学の修士号を取得し、国際協力銀行などを経て、国連児童基金(ユニセフ)のプログラムオフィサーとしてフィリピンに駐在、ストリートチルドレンの教育に携わった経験を持っています。

 新しいインターナショナル・スクールを作りたいという彼女の志に賛同した財界人がこぞって支援に乗り出し、数年の準備期間を経て開校のはこびとなりました。
 発起人やアドバイザーには、ソニー元会長の出井伸之氏や、武田薬品工業会長で産業競争力会議のメンバーでもある長谷川閑史氏など著名人が並んでいます。

 かつて日本経済が世界的に強みを発揮していた1980年代にも、日本において国際的な教育機関を設立しようという動きが活発でした。

 興銀トップを長く務め、日本の財界に大きな影響力を持っていた中山素平氏が音頭を取り、経済4団体や松下幸之助氏の支援を得て国際的な大学院大学である国際大学が開校したのは1982年のことです。

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以前は日本もソフトパワーを狙っていた時代があった
 当時、日本の国際的地位は非常に高かったですから、中山氏ら財界人が考えたのは、日本の影響力をさらに拡大させようというものでした。
 つまり、英国や米国が現在も行っているように、途上国からエリート留学生を集め、最終的には日本の利益になるようネットワーク化するという、国益重視的、ソフトパワー的な考え方です。

 こうした取り組みはある程度効果を発揮しましたが、思った程の成果を上げることができませんでした。
 東大を頂点とする帝国大学が、米国や英国のように大量の留学生を受け入れてれば話は違ったかもしれませんが、別枠で大学を作ってしまったことから、その効果は限定的になってしまったのです。

 その間に、日本の国力はみるみる低下。現在では日本の教育を世界に広めるのではなく、世界の教育スタイルに学ぶという雰囲気が強くなっています。

 今回のインターナショナル・スクールには、出井氏のような財界人が多く支援をしているのですが、80年代とはずいぶん様子が違っています。これも今の日本ならではということなのでしょう。

 現在の日本は人口減少から慢性的な人手不足になることが懸念されています。人手不足は建設業や外食など肉体労働系の分野だけにとどまりません。

 実際の企業の現場では、優秀な日本人を採用できず、若いアジア人のマネージャーを増やしているというのが現実です。

 80年代は、留学生にアジアに帰ってもらい、日本をとりまくネットワークを作ってもらうことが狙いでしたが、現在は、留学生に日本にとどまってもらい、日本の人手不足を解消してもらうことの方がむしろ期待されます。

 せっかくやってきた留学生を他国の企業に取られないよう、日本企業は、魅力的な報酬体系など労働環境の整備を行うことが必要となるでしょう。

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