経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経営論

ブランディングに関するよくある誤解

加谷珪一の知っトク経営学 マーケティング編 第5回
【ブランディング理論】

 マーケティングは、基本的に製品やサービスをどのようにして売っていくのかを追求する理論です。これと似たような概念にブランディングというものがあります。これは製品やサービスをうまくブランド化し、顧客が望んで買うようにするための一連のプロセスのことを指しています。

ブランディングの主導権は顧客にある

 企業や製品には様々なブランド・イメージが付随しています。「パナソニックの製品は壊れにくい」「アップルの製品はクール」といったイメージはまさにブランディングの結果として得られるものです。

 ブランド力が高まれば、当然、製品はよく売れますし、価格を高く設定できますから、ブランディングも広い意味ではマーケティングの一部といってよいかもしれません。しかし厳密にいうとマーケティングとブランディングは全く異なる概念です。考え方によっては正反対といってもよいかもしれません。

 最大の違いは、視点が、売る側に立っているのか、買う側に立っているのかという点でしょう。マーケティングはどうやって「売る」のかということですから、視点は常に売る側にあります。しかし、ブランディングは、製品やサービスに対して顧客が持つイメージがベースになっていますから、最終的な主導権は顧客側にあります。

 企業は顧客に対して、特定のイメージを持つよう働きかけるわけですが、顧客が持っている潜在意識を覆すことはできません。あくまでブランド・イメージを決めるのは顧客側なのです。

Copyright(C)Keiichi Kaya

Copyright(C)Keiichi Kaya

顧客がイメージしていないことをブランディングすることはできない

 しかし、この違いを認識しないまま、一方的にブランディングを実施しようとする企業が後を絶ちません。ブランディングがうまくいかないケースの大半は、基本的な認識違いが原因です。

 ブランディングを成功させるためには、顧客が製品やサービスに対して持っている潜在意識と、製品やサービスのイメージがしっかりと合致していなければなりません。両者がうまく合致したところに企業からの積極的な働きかけがあって、はじめてブランドが形づくられます。

 このあたりのメカニズムがよく分かっていない企業は、一方的に企業イメージや製品イメージを広告宣伝という形で押し売りしてしまい、その結果、思ったようなブランディングができないという状況に陥ってしまいます。

 重要なのは、顧客がどうイメージしているのかという部分です。顧客が感じていないブランドを無理に作り上げることはできません。その意味では、ブランディングというのは、勝ち組にとって有利に働くメカニズムと考えてよいでしょう。

「加谷珪一の知っトク経営学」もくじ

PAGE TOP