経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

投資をスタートするのは退職金をもらってからでは遅すぎる

加谷珪一の投資教室 実践編 第18回

 前回は、投資というのは経験がモノを言う世界であり、できるだけ早く投資に慣れることが重要という話をしました。もしそうであれば、退職金をもらってから、いきなり本格的な投資に取り組むというのは、無謀な行為であることがお分かりいただけると思います。

退職金をきっかけに株式投資スタートは危険

 退職金は人によっては数千万円になるケースがあります。そこまでいかなくても、多くの人にとってかなりの大金であることは間違いないでしょう。

 100万円、200万円というレベルですら、実際にお金を投じると、人は心理的に大きな揺さぶりを受けてしまいます。1000万円を超える金額を急に運用したら、とても平常心ではいられないでしょう。これは、草野球しか知らないのに、いきなり甲子園に出場するようなものです。

 これに加えて退職金をもらう年齢になってから運用を開始するということでは、運用期間という点でもいろいろと問題が出てきます。

 日本人の寿命はまだ延びるといわれていますが、65歳を標準的な退職年齢と考えると、そこから30年も40年も生きる人はやはり少数派でしょう。

 そうなってくると、時間を味方に付けた投資ができなくなりますから、あまり大きなリスクを取れなくなってしまいます。リスクを抑えてしまうとリターンも小さくなりますから、必要な運用益を得られない可能性も出てきます。

 退職金をもらうまでに投資の経験値を高めておき、ある程度の資産を作っておくことが重要です。この資産に退職金を加えることで投資金額を大きくし、リスクを抑えても、ある程度の収益を確保できるようにするというのが、老後の運用としてはもっとも理想的です。

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退職金をもらう頃には、ある程度の経験を積んでおくべき

 つまり退職金を受け取る時期というのは、投資を本格的にスタートさせるのではなく、リスクの高い投資を終わらせ、より安全な投資をスタートさせるよいタイミングなのです。

 言い換えれば、退職金をもらってから運用するのではなく、退職金をもらう年齢になるまでに、どれだけ運用で稼いでおけるのかが、むしろ問われていると考えるべきでしょう。

 若いうちであれば、多少、投資で失敗したところで、また働いてリカバーすることも可能です。40歳以下の人であれば、多少、ハイリスクな投資も含めて様々な投資にチャレンジした方がよいでしょう。

 ある程度の経験値を積めば、たいていの人は、長期的な視点で優良銘柄に投資していく手法が合理的であると理解できるはずです。40代であれば、そこから30年かけて投資を行ってもまだ70歳ですから、時間を味方に付けることが可能です。

 筆者が金額は小さくてもよいので、若いうちから投資経験を積んでおくべきだと主張しているのは、こうした理由からです。

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