事業に必要な資金量は時代によって変わる

お金持ちを科学する 第15回

 前回は、成長期待のあるベンチャー企業が、投資家から増資という形で必要な資金を調達し、同時に自らの企業価値を高めていくプロセスについて説明しました。

 一連の成長プロセスを見ると、企業が成長していくためには、常に資本(お金)を必要とすることが分かります。たくさんのお金を得るためには、その元になるタネ銭が必要ということなのですが、必要な資金量というのは、業種によっても変わりますし、時代によっても変化します。

 近年は、社会のIT化やシェアリング化が進み、事業に必要とされる資金量は小さくなっています。これは個人で大きな資産を作ろうと思っている人にとって朗報といってよいでしょう。

従来型産業はとにかく「重い」

 事業の拡大にもっとも大きな資本を必要とするのは、いわゆる資本集約型産業とも呼ばれる従来型製造業でしょう。トヨタは、典型的な資本集約型産業です。

 トヨタが成長を続けていくためには、常に新しいクルマを開発し、それを製造するための設備に投資を続けていかなければなりません。トヨタは1兆3000億円分の土地、4兆3000億円分の建物、11兆円分の機械装置を保有し、この資産を使って自動車の生産を続けています。

 こうした資産は使っていくうちに劣化していきますから、毎年1兆4000億円の減価償却を行い、一方で、毎年1兆円の新規投資を行っています。

 一方、ネット企業に代表されるような知識集約型企業の場合、成長を実現するにあたって、それほど大きな資本を必要としません。日本の代表的なネット企業のひとつであるサイバーエージェントの財務諸表を見ると、不動産や設備などはあまり保有していないことが分かります。会社に在籍している人が資産となっていますから、これはバランスシートには計上されないわけです。

 トヨタは売上高の1.7倍を超える資産を保有していますが、サイバーエージェントが保有する資産は売上高の半分程度しかないことからも、その違いが分かります。ネット企業は成長に必要な資金が少なくて済むビジネスモデルになっているのです。

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お金持ちになるのに大金は必要ない

 世の中で、もっともお金を必要とするのは製造業で、次にお金を必要とするのが大規模小売店や電力会社など、大きな設備を保有するサービス業になります。

 一方、ソフトウェアや広告といった業態はあまり大きな資本を必要としませんし、ピュアなネットビジネスの場合には、サーバーがあれば事足りてしまいますから、必要な資本額がさらに小さくなります。

 ネットビジネスには「ネットワーク外部性」といって、利用者数が増えれば増えるほど、そのプラットフォーム自体の価値が高まるという現象が見られます。つまり富の自己増殖機能があるわけですから、これをうまく利用しない手はありません。

 もちろんネット・ビジネスがすべてこのようにうまくいくわけではありません。しかしながら、大きな資金がないと事業を立ち上げることができないという従来型のパラダイムからの転換は着実に進んでいます。お金持ちになるためには大金が必要という発想はそろそろ捨てた方がよいかもしれません。

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