ポートフォリオは誰のため?

加谷珪一の投資教室 実践編 第13回

 投資に際してポートフォリオを組むのは当たり前とされています。これ自体は正しい考え方ですが、無条件でこの価値観を受け入れるのは少々危険です。常にポートフォリオを構築することが正しいとは限らないからです。

本来、ポートフォリオはお金持ちのための手法

 現在、筆者は億単位の金額を株式に投資しているので、当然のことながらポートフォリオを組んでいます。ポートフォリオを組めば、全体の期待リターンを変えることなく、リスクを軽減することが可能です。資産を大きく増やす目的ではなく、インフレに合わせて購買力を維持するための投資であれば、非常に有効な手段といってよいでしょう。

 しかしながら、多少、リスクを取っても構わないので、少ない金額を大きく増やしたいという投資家にとって、ポートフォリオを構築することはあまり意味がありません。
 ストレートに言ってしまえばポートフォリオというものは、一定水準以上の資産額を持つ投資家のために存在するものであり、お金がない人が活用するものではないのです。

 乱暴に言ってしまうと、投資には2つの種類しかありません。ひとつは高いリスクを取って資産を何倍、何十倍にも増やすための積極投資。もうひとつは、インフレによる購買力の低下を防ぐための守りの投資です。

 この2つは同じ投資といってもまったく種類が異なっており、基本的な考え方も正反対です。

 大きく儲けようと思えば、おのずと求める期待リターンも高くなってきます。この場合には、ポートフォリオは無視してて銘柄を選別し、そこに重点投資するというスタンスが必要となってくるわけです。

portfolio

少額長期投資の場合には、ポートフォリオが必要となる

 一方、購買力維持を重視した投資ということになると、絶対的なリターンはあまり重要ではありません。金利動向やインフレに負けないよう資産を維持していくことが、守りの投資における最大の目標となります。

 市場が持っている基本的なリターンを大きく上回る必要はありませんし、すでに多額の資産があるので、絶対値として年間いくら稼がなければならないという制約もありません。こうした投資家であれば、銘柄を可能な限り分散し、市場リスク以外は取らない方が無難です。

 巨額の資産を運用する機関投資家は安全運用が第一なので、当然のことながら、ポートフォリオを重視しています。金融工学はこうした投資家のために発達した学問なので、これらに関する知見は非常にメジャーな存在といってよいでしょう。
 しかしながら、知見としてメジャーであることと、それに該当する投資家がどれだけ存在しているのかということは、また別の話です。

 もし大きく儲けたいと思っているなら、リスクを取るしかありませんから、伸びる銘柄の選別に労力を費やした方が合理的です。

 少額投資しかしない人で、唯一、ポートフォリオを考慮に入れる必要があるのは、毎月、一定額の投資を積み上げ、超長期で投資に取り組むような場合です。こうしたスタイルの場合には、基本的に市場が持つリスク以上は取らない方が無難です。資金が少ないので個別株でポートフォリオは組めませんから、インデックス投信などを選択するのがよいでしょう。

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