貨幣とモノではGDPが逆の動きになる(LM曲線の導出)

加谷珪一の超カンタン経済学 第17回

 前回は、財サービス市場において、金利とGDP(国内総生産)は逆相関になっているという話をしました。GDPを横軸、金利を縦軸にすると、右肩下がりの曲線になりますが、これをIS曲線と呼びます。一方、貨幣の市場も金利によってGDPが影響を受けます。

貨幣には取引需要と投機的需要がある

 経済額の世界では、お金に対する需要というのは、取引需要と資産的需要の二つがあると考えます。貨幣は物やサービスの取引に必要となるものですから、経済規模が大きいと必要な貨幣の量も増大することになります(お金に対する需要については、関連記事「金利は何で決まるのか?」を参照してください)。つまり、GDPが増えると貨幣需要も増えるという関係です。

 一方、貨幣には、取引以外の需要も存在しており、これを資産需要と呼びます。

 金利が高い場合には、多少リスクがあっても、債券に投資した方が有利なので、貨幣を保有したいと思う人は少なくなります。したがって金利が高いと、貨幣に対する資産需要は減少します。
 一方、金利が低いと債券投資はあまり魅力的には感じられません。低い金利で債券投資のリスクを取るくらいなら現金で持っておきたいという人が増えてくるので、貨幣に対する資産需要は増大することになります。

 金利が上がると資産需要が減り、金利が下がると資産需要が増大するわけですが、もし、経済全体で供給される貨幣の量が一定だと仮定すると、経済は貨幣の過不足を解消するような方向に動こうとします。

 資産需要が減少しているのであれば、その分だけ取引需要が増えるようバランスされることになります。取引需要を増やすためには、GDPが増える必要があるので、結果的に金利が上がるとGDPも増加することになるわけです。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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LM曲線は右肩上がりになる

 以上の動きをグラフにすると図(右)のようになります。このグラフは、LM曲線と呼ばれており、貨幣の需要と供給が一致する場合の利子とGDPの関係を示しています。ちなみにLは貨幣需要、Mは貨幣供給のことです。

 2つを整理すると、モノやサービスの市場においては、金利が下がっていくとGDPも増えるという関係が見られます。一方、貨幣市場においては、金利が上がっていくと、GDPが増えるという関係が生じます。つまり、財市場と貨幣市場では、金利の動きに対してGDPがまったく逆の動きをするということになります。

 モノやサービスの市場(IS曲線)とお金の市場(LM曲線)で示されたGDPが、互いに逆の動きをするということは、ある金利水準に対して、IS曲線とLM曲線の両者が均衡状態になる地点でGDPが決定されるということを意味しています。

 もし金利が変化した場合、財市場と貨幣市場の均衡が崩れることになり、新しい均衡地点を目指してGDPも変化します。金利の動向から景気を予測するという作業は、財市場と貨幣市場において、どの水準でGDPが均衡状態になるのかを分析することにほかなりません。

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