財務省人事で、想定外の人物が次官に就任する理由

追記:本記事は2018年6月3日時点の報道をベースにした記事です。2018年7月27日に岡本薫明氏の次官就任が正式決定しました。岡本氏の次官就任については、最新記事「財務省人事。結局は岡本氏の次官就任で決着。注目は太田氏の主計局長就任」を参照してください。

 セクハラ問題で揺れる財務省の事務次官人事について、星野次彦主税局長の次官就任がほぼ固まりました。もし星野氏が次官に就任した場合は、異例の人事となりますが、その狙いは、状況が落ち着くまで、時間を稼ぐことにあると考えられます。

絶対的な本命は岡本主計局長だったが・・・

 官僚組織というのは、外部からの干渉を徹底的に嫌うという特徴があり、自ら確立した人事パターンの踏襲を望む傾向が顕著です。最強官庁と呼ばれる財務省は特にその傾向が強いといわれています。

 同省では、本流である主計局長から次官に昇進するケースが多く、従来の人事パターンから考えると、現在、主計局長の座にある岡本薫明氏が次官の最有力候補でした。また、官庁の人事においては入省年次が絶対ですから、新しい次官が誕生すると、ほぼ次の次官も確定するというのが従来の流れとなっています。

 岡本氏は1983年入省で、1984年入省組には次官候補になる人物はいませんから、その次の次官は85年入省組から出る可能性が高いと考えられていました。85年組で有力なのは、現在、官房長を務めている矢野康治氏、総括審議官の可部哲生氏、国税庁次長の藤井健志氏の3人です。

 もし岡本氏が次官になれば、3名のうちの誰かが主計局長となり、次の人事に備えるというのが大方の見方でした。

 ところが今回、次官に就任することが固まったのは、岡本氏と同期入省の星野氏でした。星野氏は、主査までは主計局を中心にキャリアを積みましたが、その後、主税畑として昇進を重ね、主税局長に就任しています。途中、次官の登竜門である文書課長は経験していますが、本来の人事パターンであれば、次官に昇進する人物ではありません。

 ここであえて本命ではない人物を次官に据えた狙いは、おそらく時間稼ぎでしょう。

 現時点では財務省問題がどのように収束するのか、まったく見通しが付きません。ここで岡本氏を次官に就任させるのはリスクが大きいと判断したものと思われます。

9d846ed7_s

政局の動向が見えないと可部氏の処遇が難しくなる

 さらに言えば、政局が流動的なこともあり、さらに次の次官候補者(85年入省)の処遇にも苦慮した可能性が高いでしょう。特に神経を使うのは可部氏です。

 85年に入省した3名の中で、現時点で次官のポストにもっとも近いのは官房長の矢野氏ですが、矢野氏は次官に就任する人物が多く経験するポストをあまりこなしていません。経歴的には可部氏や藤井氏の方が有力であり、あえて言えば文書課長の経験がある藤井氏が最有力といえるかもしれません。

 可部氏の処遇が難しいのは、可部氏が岸田文雄自民党政調会長の義弟であり、政治色が強いことです。もし政局となり岸田内閣が誕生すれば逆に可部氏を次官にした方が財務省にとってはメリットが大きいかもしれませんが、当然、逆の動きになる可能性もあります。

 こうした状況を総合的に考えると、今は人事を大きく動かさず、様子を見た方がよいという結論になります。岡本氏と矢野氏は留任が固まり、藤井氏は国税庁から本省に戻って主税局長に就任する予定です。

 星野氏と岡本氏は同期ですから、次に岡本氏が次官に就任する可能性は残っていますし、藤井氏もその次に次官を狙えるポストに就くことになります。財務省問題がどう終結し、政局がどうなるのかによって今後の人事の流れも変わりますから、とりあえずは様子見と考えてよいでしょう。

財務省の人事については、以下の記事も参考にしてください。

財務省の福田事務次官が辞任。今後の人事はどうなる?

2018.04.18

森友問題で大ピンチ。なぜ財務省は最強官庁と呼ばれてきたのか?(前編)

2018.03.13

森友問題で大ピンチ。なぜ財務省は最強官庁と呼ばれているのか?(後編)

2018.03.14