陰謀論という陰謀論に騙されてはいけない

加谷珪一の投資教室 実践編 第9回

 投資をするようになると、様々な情報が気になってくるものです。アナリストが書くレポートはもちろんのこと、株価に関するマスメディアの記事やネットで飛び交う噂話など、投資家の行動に影響を与える情報は山のように存在します。

 投資でよい結果を残すためには、これら無数の情報に対して常に「中立」であることが求められます。情報は情報として受け取り、感情に揺さぶられないようにするタフさが必要となります。

情報は人々の心理に左右される

 一般的に上昇相場が始まる段階では、懐疑的な意見しか出てきません。楽観的な見方はほぼ全否定されてしまうといってもよいでしょう。しかし、実際に株価の上昇が始まると、徐々に投資家の心理が変わっていき、最後には、全員が株価の上昇を疑わなくなります。

 全員が楽観論者になった時が、株価のピークなのですが、そこに到達するまでの時間は意外なほど長いというのが現実です。もうこれ以上、上がらないと思ってもさらに株価は上がっていくので、とうとう最後には全員が強気になってしまうというメカニズムが働いてしまうのです。

 マスメディアの記事や市場で飛び交う情報を参考にする際には、人々の心理がもたらすこうした特性について理解しておくことが重要です。

 ネットの掲示板などを見ると、自身と見解が異なる記事や専門家の発言に感情的に反発している人をよく見かけますが、そのようなスタンスでは投資に勝つことはできません。
 厳しいようですが、情報に対して感情的に反発しているようでは、ほぼ100%儲けられないと断言してもよいでしょう。自分と異なる見解が示されている時には、なぜそうなっているのか分析する冷静さが必要です。

 証券会社のアナリストやエコノミストの多くは、個人投資家のためにレポートを書いているわけではありません。あくまで証券会社のビジネスの一環として、大口顧客のためにレポートを書いています。その内容の是非以前に、読ませる対象が異なっていることを理解しておいた方がよいでしょう。

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市場は特定の誰かにコントロールされているわけではない

 投資をしていない人の見解を無意味と批判する人もよく見かけるのですがこれもナンセンスです。確かにこうした人の見解の中には投資の現場感覚から乖離した主張も散見されるのですが、投資をしている人の意見は逆にポジション・トークといって、自身の投資に有利なようにバイアスがかかっている可能性があります。

 双方の情報の属性をふまえて、自分なりに消化すればよいだけです。誰がどんな内容の情報発信をしているのかということそのものが、有益な情報源になるということを忘れないでください。

 一方、特定の組織や人物が市場を仕切っていて、情報がコントロールされているという話もよく耳にします。しかしながら、こうした陰謀論的な話は基本的にウソと考えた方がよいでしょう。つまり陰謀論そのものが陰謀論なわけです。

 筆者はこれまで、ジャーナリストとして、あるいは金融マンとして、さらには個人投資家としてずっと市場に関わってきましたが、市場が特定の誰かにコントロールされているということはほぼないと断言できます。

 ヘッジファンドや仕手筋など、特定の投資家によって市場の動きが歪められることはありますが、ほとんどの場合、市場のごく一部の動きを説明しているにすぎません。時価総額の小さい銘柄に、特定の買いが集中して入るということはありますが、これは市場全体に筋書きがあるという話とはまた別問題です。

 情報の分析や受け止め方について特に興味のある方は、連載記事「情報リテラシー基礎講座」を参考にしてください。

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