経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 超カンタン経済学

モノもお金も金利から影響を受けている(IS曲線の導出)

加谷珪一の超カンタン経済学 第16回

 これまで、GDP(国内総生産)というのは、貯蓄と投資がバランスする地点で均衡するという話をしてきました。この考え方をベースに、GDPの各項目に変化が生じた場合、最終的にGDPがどう推移するのかについてモデル化したのが「IS-LM分析」です。

IS曲線とLM曲線のカギを握っているのは金利

 IS-LM分析はIS曲線とLM曲線の2つを用います。IS曲線は、一般的なモノやサービスの市場(財サービス市場)における需要と供給が均衡する時の、金利とGDPの関係を示したものです。一方、LM曲線は、貨幣市場において、貨幣の需要と供給が均衡する時の、金利とGDPの関係を示しています。

 つまりモノの市場もお金の市場も金利がカギを握っており、双方がうまくバランスする金利水準で経済が均衡するという考え方です。

 投資というのは基本的に金利の影響を受けます。金利が下がるとお金を借りやすくなるので、企業は設備投資を増やします。一方、消費(C)はこれまで何度も説明してきたように、基本的にGDPの大きさで決まります(つまり所得の一定割合を人々は消費する)。

 消費されなかった分が貯蓄に回り、これが投資の原資となりますが、利子が下がって投資が増えたわけですから、貯蓄がその分だけ増えなければ、貯蓄=投資の関係が成立しません。
 最終的には投資(I)と貯蓄(S)が一致する水準までGDPが増えて、それで均衡状態に達することになります。つまり、金利の低下はGDPの増加要因ということになります。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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政府支出は独立しているのでGが増えるとIS曲線がシフトする

 逆に金利が上昇した場合には、投資が減少し、同様に投資と貯蓄がバランスするところでGDPが決まります。金利が下がるとGDPが拡大し、金利が上がるとGDPが減るという関係ですから、GDPは金利の減少関数と言い換えてもよいでしょう。

 これをグラフに書くと図(左)のようになります。金利が下がれば下がるほど、GDPは増えていきますから、グラフの形状は右肩下がりです。

 IS曲線というのは、投資(I)と貯蓄(S)がバランスする地点における金利とGDPの関係を示していると理解することが可能です。

 ちなみに政府支出(G)は一定と仮定していますが、政府が財政出動を行うとGが増加します。短期の動きで金利に変化がないと仮定すると、同じ金利水準でGDPが増えますから、IS曲線は右側にシフトすることになります。IS曲線がシフトする話は次回以降でよく出てきますから、覚えておいてください。

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