企業は満足と不満足を別々にマネジメントする必要がある

加谷珪一の知っトク経営学 組織編 第8回
【ハーズバーグの二要因理論】

 前回、解説したマグレガーのX理論とY理論は、人間が持つ二つの側面を体系化したものですが、同じような考え方はハーズバーグの二要因理論にも見られます。

不満足要因は満足要因との関連性がない

 米国の心理学者であるハーズバーグ(1923~2000)は、多くのビジネスマンを対象にヒアリング調査を行い、人々の欲求には2つの種類があり、満足感を引き起こす要因と不満足感を引き起こす要因は別々であることを突き止めました。

 満足感を引き越す要因(動機付け要因)としては、仕事の達成感や周囲からの承認、責任の重さといった項目が並んでいます。ここで列挙されている項目は、一般的にモチベーションを高めるために必要とされるものと一致しています。

 つまり、満足感を得る方法は実はそれほど難しいものではなく、達成感のある仕事を行ったり、責任ある立場に就くことによって、比較的容易に満足度を高める事ができます。社員に仕事をさせる場合には、無意味な仕事は与えず、達成レベルが視覚的によく分かる形にした方が満足度は高まるでしょう。

 ここまでは当たり前の結論といえますが、ハーズバーグ理論の面白いところはここからです。

 彼は同じように、不満足をもたらす要因(衛生要因)について、ビジネスマンにヒアリングしているのですが、そこで得られた内容は、先ほどの満足感をもたらす要因とはまったく関係なかったのです。

 具体的に不満足をもたらす要因として上位に並んだのは、会社の管理方針、評価制度、対人関係となっており、これらは、達成感、承認、責任の重さなど、満足感をもたらす要因とは関係しません。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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企業は満足と不満足を別々にマネジメントする必要がある

 ここで分かったことは、満足感を得ていないという状況が、不満足につながっていたわけではないということです。不満の要因は単独で存在するわけですから、仕事での満足感が高まったからといって、不満足の要因が消えることはなく、逆に、仕事での満足感が低くても、それが必ずしも不満足につながるとは限らないわけです。

 不満足の要因を消し去っても、それがそのまま満足感にはつながるわけではありませんから、モチベーションを管理する人にとっては、両者はまったく別の課題として取り組む必要があります。

 一般的に満足感をもたらす要因については、それが満たされるとさらに上を望むという傾向が見らます。したがって、達成感が常に得られるような工夫をしておけば、さらに良い結果を出したいというモチベーションが維持されるという解釈が成立します。

 特に達成感と承認については、満足度への寄与度が高く、この二つを重点的に改善すれば、仕事に対する満足感は劇的に向上することになります。

 一方、不満足をもたらす要因については、それを解消してもマイナスを埋める効果しかありません。たとえ大きなコストをかけたとしても、プラスには働かないのです。

 そうなってくると、不満足の解消はベースラインを整えるための措置、満足度を高める工夫は、さらに上にいくための措置と考えた方がよいでしょう。

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