日本経済の低迷に伴ってサラリーマン富裕層が台頭

お金持ちを科学する 第9回

 前回は、日本の富裕層の資産が不動産に偏っているという現実について説明しました。これに加えて、最近の日本に顕著な特徴としては、定年を間近に控えた、共働きの公務員夫婦や大手企業の社員夫婦など、富裕層とまではいかないまでも、それに近いいわばプチ富裕層になるサラリーマンが増えていることです。

近年、プチ富裕層が増えているのは日本の貧しさと関係している

 本来、公務員や大手企業のサラリーマンというのは典型的な中間層であり、富裕層になるような人たちではありません。しかし、日本の場合にはちょっと特殊な事情があります。それは日本全体が年々貧しくなっていることと大きく関係しています。

 日本のGDPは過去20年間ほぼ横ばいが続いています。日本にいるとあまりピンときませんが、同じ期間に諸外国のGDPは大幅に拡大しており、米国は約2.4倍に、フランスは約2倍、ドイツは約1.8倍(仏独はドル換算)になりました。新興国もすべてを平均すると約2倍ですから、日本だけが成長できていないという状況だったわけです。

 日本は貿易で国を成り立たせていますから、経済規模が小さくなると、同じ金額で購入できるモノやサービスの量が減ってしまいます。つまり、経済規模が小さくなると、その分だけストレートに貧しくなってしまうわけです。
 端的に言えば、日本はここ20年の間に、実質的な経済規模が3分の2から半分に落ち込んでしまったとみてよいでしょう。

 その結果、GDPが横ばいであるにもかかわらず、日本人の平均所得は減少の一途を辿ってきました。しかし、公務員の給与は経済状況とは関係ありませんから、むしろ増えているのが実情です。また、大手企業には規制産業も多いですから、公務員と同様、給与水準が経済状況をあまり反映しません。

 下請けビジネスが多い中小企業の社員や個人事業主の所得が急激に減少し、その分、公務員や大手企業の社員の年収が相対的に増加するという現象が起こっており、これが所得の分布を大きく変えているのです。

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サラリーマン富裕層の増加は経済全体にとってはマイナス?

 以前は、公務員や大企業の世帯は専業主婦が多かったのですが、最近では夫婦で公務員や大手企業の社員というところも増えてきました。

 ダブルインカムで、かつ親から自宅を相続することができた人は、理論的には生活費以外をすべて貯蓄することが可能となります。そうなってくると、退職金をもらう頃の年齢になると、純資産が1億円を超えるという世帯が現実に登場してくるわけです。これがサラリーマン出身のプチ富裕層の正体です。

 もし夫婦共働きで、両名ともにそれなりの給与をもらっているという世帯は、余裕があるからといってムダ使いをせず、堅実に投資を積み重ねて行った方がよいでしょう。30年後にはかなりの確率でプチ富裕層になれると思います。

 もっとも(プチ富裕層になったサラリーマンの人たちには、もちろん何の責任もありませんが)、こうした状況は日本経済の将来を考えるとあまりよいことではありません。

 マクロ経済的に生産しないセクターで働く人や、リスクを取らず、変化に乏しい産業に従事している人の所得ばかりが増えるというのは、経済原理に反しています。

 リスクを取らずに資産を形成する人たちの割合が増えてしまうと、新しくリスクを取る人が減ってしまい、投資が抑制されてしまいます。これは近い将来、日本経済における大きなマイナス要因となってくる可能性があります。

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