輸出があった場合、経済学の「貯蓄=投資」はどうなるのか?

加谷珪一の超カンタン経済学 第14回

 これまでの記事で、GDP(国内総生産)における支出項目の中で、貯蓄と投資が一致するところで経済はバランスが取れる(均衡状態になる)という話をしてきました(過去記事はこちら)。この話は、GDP(国内総生産)の項目に純輸出(貿易収支)が加わっても同じことです。

貿易や政府の借金がある場合、貯蓄のすべてが投資されるわけではない

 貿易が存在しない場合、家計は得た所得の一定割合を消費して、残りを貯蓄します。そして貯蓄は投資へと回され、将来の経済成長の原動力となります。

 貿易が存在した場合には、基本的はメカニズムは同じですが、動きが少し複雑になります。家計が得た所得の一定割合を消費して、残りは貯蓄されるのは同じですが、貯蓄がすべて投資に回るわけではありません。貯蓄されたお金と投資されたお金の差額は、貿易収支と財政収支(政府の借金)で案分されます。式に書くと以下の通りです。

 貯蓄(S)= 投資(I)+ 貿易収支(NX)+ 財政収支(G-T)

 個人が貯蓄したお金は、投資に回るか、政府の借金に回ることになります。それでも余ったお金は貿易黒字の分と一致することになります。

 経済というものはお金がグルグルと社会を回っている状態をモデルにしたものですから、支出されたお金は、必ず誰かが受け取り、そのお金はまた誰かにわたっていきます。貿易で外部とのやり取りがあった場合には、その分が必ずどこかでバランスしていなければなりません。

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お金がどう分配されているのかが重要

 先ほどの式は以下のように書き換えることもできます。貯蓄と投資の差額は、貿易収支と財政収支に等しいということです。

 貯蓄(S)- 投資(I) = 貿易収支(NX)+ 財政収支(G-T)

 もし何らかの理由で貯蓄が減った場合には、貯蓄と投資の差額が小さくなりますから、貿易黒字を減らすか、国の借金(つまり財政赤字)を減らすしか、埋め合わせる方法はありません。逆に、投資が変らず貯蓄が増えた場合には、貿易黒字が増えたか、国の借金(財政赤字)が拡大したかのどちらかです。

 日本の将来について、高齢者が生活のため貯金を取り崩した場合、貿易収支が赤字になるという話を耳にしたことがあると思いますが、その話はこのモデルで説明することが可能です。

 赤字という言葉はネガティブなイメージがあり、貿易赤字は良くないことというイメージが定着しています。しかし、貿易収支での赤字黒字は、単にお金の出入りがマイナスになっていることを示しているだけであり、それが直接的に良い、悪いということを示しているわけではありません。

 重要なのは、どこからお金がやってきて、どこにお金が回っているのかという点です。貯蓄が減ったり、貿易収支が変わったり、財政赤字が増大すると、お金の流れが大きく変わります。これが経済を変化させる原因になるわけです。

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