ヘッジファンドはどんなことをやっているのか?

加谷珪一の投資教室 実践編 第7回

 ヘッジファンドは金融工学を用いた高度な投資手法を駆使しているといわれており、個人投資家の中にはヘッジファンドに対して過剰に恐怖心を抱いている人もいます。
 しかしながら、ヘッジファンドだからといって特殊なことをしているわけではありません。中身を知ればそれほど恐れる必要はないのです。

典型的な手法はロング・ショート

 ひとくちにヘッジファンドといっても、その投資スタイルは様々ですが、おおまかには以下のようなパターンに分類できます。理解する際のポイントは英語に惑わされないことです。日本語に置き換えてみると、何をしているのかスッキリ理解出来るでしょう。

 ①ロング・ショート(買いと売り)
 ②マーケット・ニュートラル(市場中立)
 ③アービトラージ(裁定取引:さや抜き)
 ④グローバル・マクロ(投機筋)
 ⑤イベント・ドリブン(材料)

 この中で特に重要なのは、ロング・ショートとグローバル・マクロです。

 ロング・ショートはヘッジファンドの伝統的な投資スタイルです。ロング・ショートというと何やら知的なイメージがしますが、何のことはない、株式の「買い」と「売り」の組み合わせです。割高と思われる株を空売りし、割安と思われる株を買えば、その価格差が是正されることによって利益を出すことができます。

 市場全体が下落しても、割高な株の方が割安な株よりも下落幅が大きいため、売り買いを差し引きすると利益が出る仕組みになっています。
 もっとも「股裂き」といって、割高銘柄がさらに上昇し、割安銘柄がさらに下落することもあり、そうなると一気に損失幅が拡大してしまいます。結局のところ銘柄選定をどうするのかが決め手であり、金融工学は銘柄選びのツールでしかありません。

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グローバル・マクロは日本の投機筋に近い

 一方、グローバル・マクロは、世界各国の株式、為替、債券、コモディティといった商品に幅広く投資し、市場のトレンドや価格のひずみなどを利用して利益を上げる投資スタイルです。著名投資家であるジョージ・ソロス氏の投資スタイルは典型的なグローバル・マクロといってよいでしょう。
 
 同氏は1992年、英国政府の為替介入に際してポンドが割高と判断。ポンドの空売りを行い莫大な利益を上げました。2000年代後半にはコモディティ価格の上昇が続くと判断し、銀ETFを大量購入。高値で売り抜けています。

 グローバル・マクロは、各国の商品に投資するという点で違いはありますが、基本的な相場の張り方は、日本の古典的な投機筋とあまり変わりません。上がるから買う、買うから上がるという理屈です。リスクヘッジをあまりしていないファンドも多く、読みをはずしてしまうと巨額の損失を計上してしまいます。

 マーケット・ニュートラルは市場全体の動きに影響を受けないようポートフォリオを調整するタイプの投資スタイルを指します。
 アービトラージ(裁定取引)は、同一商品における価格差を利用して鞘抜きを行っています。国債の金利差、先物と現物の価格差、同一銘柄の複数市場での価格差、国ごとの価格差などが裁定取引の対象となります。

 イベント・ドリブンは企業のM&Aや金融危機など、ある出来事の発生で市場が大きく動いたときに生じる価格のひずみを利用して利益を得る手法です。日本の相場用語でいうところの「材料に投資」するという考え方に近いでしょう。

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