投資の動向が経済を決める

加谷珪一の超カンタン経済学 第11回

 前回はGDPを示す数式が恒等式という特殊な数式であり、消費や投資、政府支出はどんな値でも取り得るという話をしました。
 しかし、それでは将来の景気について予測することができなくなってしまいます。経済分析を行う際には、いくつかの仮定条件を置いて、GDPは消費、投資、政府支出のいずれかの関数であると予測を行うのが普通です。

経済のカギを握っているのは投資

 これまで解説してきたように、消費というのは、経済全体で大きな割合を占めるものの、基礎的な支出であることから、なかなか動きにくいという特徴があります。これに対して、投資は将来の富を生み出すための支出ですから、景気の先行きに敏感に反応する傾向が顕著です。

 こうした特徴から、経済学の世界では、家計は所得の一定割合を機械的に消費すると考え、投資の動きがGDPを左右するという考え方がよく用いられます。もちろん、現実の経済が投資だけで決まるわけではありませんので、あくまでもひとつの仮定との割り切りが必要です。

 消費(C)の水準がGDPの一定割合になると仮定した場合、消費はGDPの水準以外の要素では変化しません。GDPが大きくなれば消費もその分だけ増えるという仕組みですから、景気の動向を決めるのは投資(I)か政府支出(G)ということになります。

 政府支出についても景気対策を行わない場合、とりあえず一定額のままですから、景気を左右するのは、最終的に投資という結論が得られます。つまりGDPは投資の関数ということになります。

 では投資は何によって変化するのでしょうか経済学の世界では投資は金利の動きに左右されると考えます。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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シンプルにモデル化するとGDPは投資で決まる

 企業は銀行からお金を借りて工場など設備投資を行います。お金を借りると金利が発生しますから、金利が高いと企業はお金を借りたがりません。逆に金利が安いと企業は積極的にお金を借りて設備投資を実行しようとします。

 つまり金利が上がると投資が抑制されてGDPも縮小し、金利が下がると、投資が増えて景気が拡大すると考えるわけです。

 もっともシンプルな経済モデルでは、金利の動きが出発点となり、これが投資の水準を決め、これによってGDPが動くという流れになります。金利の動きを分析することで、今後、経済がどうなるのか予想するわけです。

 しかしながら、現実の経済はそう簡単ではありません。金利の動向は政府支出にも影響を与えますし、消費の動きも変化します。あくまで「こうなる」という予想は、一定条件下における頭の体操であるとことを忘れてはなりません。ただ、他の条件があまり変化しない状況では、こうしたシンプルな予想がうまく当たることもあります。

 経済の分野には、定義や定理、あるいはそれを導き出す論理を曖昧にしたまま議論を進めることがある程度、許容されるなど、自然科学の分野には見られない独特の習慣があります。理数系の基礎教育を受けた人にとっては、こうしたカルチャーは少々受け入れ難い部分があるようです(筆者の大学の専攻は原子核工学でしたので、その気持ちはよく理解できます)。

 しかしながら、そうしたカルチャーだからこそ、臨機応変な議論が可能となるのも事実であり、あまりガチガチに考えず、柔軟に構えた方がよいでしょう。

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