経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 超カンタン経済学

GDPの三面等価ってどういうこと?

加谷珪一の超カンタン経済学 第9回

 前回までは、GDP(国内総生産)は、消費(C)、投資(I)、政府支出(G)という3つの項目で構成されるという話をしてきました。これらはすべてお金を支出する側に着目したものです。
 しかしながら、お金を支出した家計や企業、あるいは政府が存在するなら、そのお金を受け取った家計や企業もあるはずです。

GDPが持つ、支出面、分配面、生産面

 家計が支出したお金は、通常、企業が製品やサービスの対価として受け取り、そのお金は従業員への賃金という形で支払われ、最終的に家計に戻っていきます。企業は一部を利益として留保しますが、このお金は銀行に預金されますから、そこから別の投資に回っていきます。

 企業が製品の仕入れや経費として支払ったお金や、政府が支払ったお金も同じです。いろいろなところを経由しながら、最終的には賃金という形で家計に戻ってきます。

 このほか企業は、利益の一部を配当という形でも還元します。企業に投資をしているのは最終的には個人(家計)ですから、賃金と同様、これも家計に戻ってくる結果となります。

 すべてをトータルすると、お金を支出した人と、お金を受け取った人は、皆、同じ人たちです。先ほど、支出という面でGDPを定義しましたが、これはお金を受け取った側の人から見ても、同じ金額になっているはずです。また、製品やサービスを家計に対して提供した企業から見ても、やはり同じ金額になっています。

 これらは、同じ経済活動を、お金を使う立場(支出面)、モノやサービスを提供する立場(生産面)、受け取った対価をもらう立場(分配面)、という別々の立場から眺めたものに過ぎません。3つの面はすべて同じことを示していますから、それぞれの数字は理論的には完全に一致するはずです。これをGDPの三面等価と呼びます。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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どこを経由してお金が回ったのかは、次の消費に影響する

 家計に対して製品やサービスを提供する側(生産面)から見ると、GDPは各企業が生み出した付加価値の総和となります。ある企業が100円で商品を仕入れ、150円で売った場合には、その企業が生み出した付加価値は50円となります。

 何もないところから50円の製品やサービスを生み出した場合には、仕入れはゼロですから、この場合は、50円全額が付加価値です。このようにしてすべての企業が生み出した付加価値を足し合わせると、GDPの金額と一致します。

 お金を受け取る立場の人から見た場合(分配面)、GDPは賃金(GDPでは雇用者報酬と呼ぶ)と企業の利益に相当する営業剰余に大別することができます(残りは減価償却となりますが、ここでは割愛します)。営業剰余は最終的には利子や配当という形で家計に戻っていきます。

 所得を得た家計は、これまで説明してきた通り、一定割合を消費し、残りは貯蓄します。貯蓄分は投資という形で支出されますから、これは支出面のGDPにつながるわけです。

 通常、GDPについて議論する時には支出面に着目することがほとんどです。GDPに関する報道も、基本的には消費、投資、政府支出が軸になっています。

 しかし経済の状態がどうなっているのか、あるいは今後どうなるのかを考える時には、別の面。特に分配面についても考えることが重要です。

 なぜなら、どのようにお金が分配されたのかによって、次のお金の使い方が変わってくるからです。例えば、企業の営業剰余の割合が高く、利子・配当で家計にお金が戻っているのであれば、富裕層の消費が拡大しやすくなります。一方、雇用者報酬の比率が上がっている場合には、中間層の消費が活発になるでしょう。

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