経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

最後に買う人になってはいけない

加谷珪一の投資教室 実践編 第3回

 人は自分の記憶の範囲で物事を考える傾向が顕著です。このため、変化が起こると一定割合の人が必ず拒絶反応を示します。やがて、変化した状態が当たり前になり、多くの人が現実を受け入れるようになると、今度はそこから抜け出せなくなってしまいます。

いつの時代も多くの投資家が変化に付いていけなくなる

 投資も同様で、多くの人が自分の常識を中心に物事を考えがちです。このため、株価が上昇を始めると、必ず「バブルだ」「割高だ」「暴落する」という話が出てくることになります。

 1980年代のバブル相場の際、若手トレーダーが次々に上昇銘柄を買い上がって大きな利益を上げる一方、年配のトレーダーが、早々と手仕舞ってしまい、利益を上げられないという事態が続出しました。

 年配のトレーダーは、自分の経験が絶対なので、その常識を越えて上昇した株価についていけず、「こんなに上がるはずがない」と考えてしまったのです。一方、新人のトレーダーは、過去に投資の経験がないため、年配者が持っている「常識」がありません。このため、上昇銘柄を素直に買い上がって大きな利益をもたらしたわけです。

 しかしながら、その時、大きな実績を残した若手のトレーダーの大半は、その後のバブル崩壊とデフレ時代でどうなったでしょうか。多くが新しい時代に付いていけず、最前線から消え去っています。

 上昇相場が続く時、買い手として参加する投資家の顔ぶれは、次々と変化していきます。

 変化に敏感な個人投資家が最初の段階で買いに参戦し、その後は、機動的な機関投資家が参入してくることになります。

 その後、一般的な機関投資家が加わり、最後の最後に投資をスタートするのが、もっとも過去の常識に忠実だった投資家たちです(多くが、これまでは株式投資に批判的だった個人投資家です)。彼等が参戦してくる頃には、ひとつの相場は終了し、株価は下落に向かいます。

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最初に投資しないと儲からない

 株価は通常、金額ではなく割合で上昇します。例えば、1000円だった株価が上昇して1500円になったと仮定しましょう。このとき値上がりした金額は500円ということになります。

 では、1500円になった株価がもう一段、上昇した場合、同じ500円の上昇で2000円になるのかというとそうではありません。1000円から1500円の上昇は50%の上昇なので、次も同じように50%上昇する可能性が高いのです。

 1500円の50%ということは2250円と計算されます。つまり、株価は上昇すればするほど、絶対値としてさらに値上がりが加速していくのです。

 これは何を意味しているのかというと、早い段階から投資に参加した人が圧倒的に有利なゲームになるということです。アベノミクス相場を予見し、安倍政権のスタート前後に投資を開始した人は、多くが資産価値を2倍から3倍に増やしています。

 筆者がこの頃に投資した銘柄は総じて2倍以上になっています。株式投資は早い者勝ちのゲームと思った方がよいでしょう。

 当然ですが、最初のうちに投資を決断することにはリスクが伴います。下がるかもしれないと思う中で投資を継続するのは並大抵のことではありません。
 しかしながら、こうしたリスクを取ったからこそ、その投資家は大きなリターンを得ることができます。投資において、最後に参戦する人にだけはなってはいけません。

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