ジャーナリスティックな情報に接する場合の注意点

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第13回

 前回はアカデミックな情報に接する場合の注意点について解説しましたが、今回は、ジャーナリズムなどによく見られるストーリーを重視した分析手法についての注意点です。

時代が変化している時は有効に作用する

 ジャーナリストは、たいていの場合、人に対する取材で情報を入手していきます。最初に記者が、全体としてはこうなっているのではないか、と想像した上で、個別のインタビューでそれを裏付けていくということもありますし、全体像が見えないまま取材を続け、断片情報を組み合わせることで、最終的に全体像にたどり着くというケースもあります。

 いずれせよ、分析の基礎となっているのはストーリーです。多くの話が矛盾なくつながり、話がスムーズに流れていくのかどうかで、その話が正しいのか検証するわけです。

 学術的に決まった枠組みがあり、それに合っているか、合っていないかという観点でのみ検証を行うアカデミズムの世界とは全く異なる基準が存在していることに注意が必要です。したがって同じ対象について分析していても、アカデミズムとジャーナリズムでは、結果が異なるとうケースも出てくるでしょう。

 ストーリー性を重視した分析の最大の特徴は、既存の価値観や枠組みから自由であるという点です。

 特に社会の仕組みが大きく変化している時には、既存の枠組みだけを基準にしていては、何が起こっているのか正確に把握することができません。その中で人がどのように考え、行動したのかを追いかけた方が、現実をより客観的に把握できます。

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たいていの場合、想定読者が決められている

 1990年代から2000年代にかけて、米国ではまさにIT革命とも呼ぶべき事態が進行していました。ITの急速な普及が経済にどのような影響を及ぼすのか、マクロ的な視点で理解が進んだのは、つい最近のことです。

 変革が現在進行形となっている時には、ジャーナリズムの手法を使って分析した方が、確実に状況を把握できます。最近ではロボットや人工知能など、まったく新しいテクノロジーが登場しており、再び社会が変化しそうな状況です。このような時代においては、あまりマクロ的な情報は役に立たないかもしれません。

 一方、こうしたストーリー性を重視した分析手法には欠点もあります。組み立てたストーリーに都合のよい情報をだけを集めてしまったり、偶然に、集めた情報から間違った結論が得られてしまうといったケースです。もしこのような形で分析が行われてしまうと、場合によっては180度反対の結論が出てきてしまう可能性もあるわけです。

 データを用いず、人に対する取材のみで組み立てた記事には特にこうした傾向が顕著です。しかし、ここで、記事に対してウソだと怒っていては、卓越した情報の使い手にはなれません。
 間違っていると思われる情報に接した場合には、どこでその間違いが生じているのかを考える作業がむしろ重要なのです。それができるようになると、そこからまた別の知見が得られることも多いからです。

 ストーリー性を重視した分析のもうひとつの特徴は、当初から想定読者が決まっているという点です。

 マスメディアのコンテンツは、多くが最初から想定読者が決められています。このため、現実には、ある程度、読者層を絞った上で記事が作成されます。
 記事を読む際には、まずどのような人を対象にした記事なのかを考える必要があるでしょう。女性を想定した記事に、男性の感覚で意見を持ってもあまり意味がないことは容易に想像できると思います。

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