加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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日本で子供の貧困が増加中。その背景にあるのは?

 

 日本において、子供の貧困が深刻化しています。厚生労働省がまとめた2013年国民生活基礎調査によると、2012年における子供の貧困率は16.3%で過去最高となりました。20年前には10%程度でしたから、1.5倍に拡大したことになります。

日本のシングルマザーは仕事を見つけても貧困から脱出できない
 子供の貧困率は、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合を示す数値です。
 子供の貧困率が上昇してきた直接的な原因ははっきりしています。それはシングルマザーの増加なのですが、その背後にはかなり深刻な問題が隠れているようです。

 日本では女性の就労機会は限定されていますから、女性は正社員として働きにくい環境にあります。男性の非正規社員の割合は20%ですが、女性は50%を超えています。

 今の日本では、正社員と非正規社員との間に、圧倒的な給与格差が存在しています。非正規社員の収入だけで十分に生活を成り立たせることはかなり難しいでしょう。また十分なキャリアがなかった人が急に仕事を探しても、なかなかよい条件の職場を見つけられない可能性は高いと考えられます。

 離婚をきっかけにシングルマザーになった人が、十分な収入を確保できない状態になっていることは比較的容易に想像できます。
 このこと自体はあまり驚くべきことではないのですが、問題なのは、たとえ仕事を持ったとしても、あまりにも低い水準の収入しから得られないという人が多すぎるという点です。

 OECDの調査によると、日本における仕事がない一人親世帯(多くがシングルマザーと考えられます)の貧困率は50.4%となっているのですが、仕事がある一人親世帯の貧困率もやはり50.9%とほとんど変わらないのです。これは日本にだけ見られる特徴的な傾向であり、かなり異様なことです。

 仕事に就いていても貧困水準以下の収入しか得られないのは、労働に対してまともな賃金が支払われていないという状況が存在しているからです。搾取や暴力が横行する途上国ならまだしも、市場メカニズムが整備された先進国では本来あってはならない事態といってよいでしょう。

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日本は市場メカニズムが機能していない
 日本では最低賃金の制度がありますが、こうした統計データが出てくるということは、最低賃金などに代表される労働法制はほとんど守られていない可能性があります。

 しかしながら、筆者がここで指摘したいのは、最低賃金を守らない企業の倫理性のなさではありません。日本の市場経済のメカニズムが機能していないという事態をむしろ憂慮しているのです。

 一定以上の付加価値のある先進国では、自由競争であっても、というよりも、自由競争であればこそ、賃金は一定水準に収束していきます。経営者と労働者がそれぞれ合理的に行動すれば、企業側が一方的に搾取することは不可能だからです。

 実際、昨年まで最低賃金がなかったドイツの最低水準の賃金は時給800~900円程度と日本の最低賃金より高い水準でした。同じく最低賃金のないスイスでは最近、時給2500円の最低賃金の導入をめぐって国民投票が行われていました(結果は否決)。
 
 働いても、働かなくても状況が同じという労働市場が存在しているということは、日本の市場メカニズムが完全に制度疲労を起こしている証拠といえます。

 子供の貧困は、一定以上の教育を受ける権利という、先進国では基本的人権と見なされる権利すら侵害してしまう可能性があります。大人の貧困対策はもちろん大事ですが、それ以上に、早急な対策が必要なテーマといえるでしょう。

 短期的にはこうした子供に対する経済的な支援が重要となりますが、長期的には硬直化した日本の労働市場に本格的にメスを入れる必要があるでしょう。

 - 社会, 経済

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