経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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財務省の福田事務次官が辞任。今後の人事はどうなる?

 週刊誌でセクハラ疑惑が報じられていた福田淳一財務事務次官が辞任することになりました。当初は、セクハラ被害を訴えている女性に名乗り出るよう求めるなど、高圧的な態度でしたが、世論の圧力に抗しきれなかったようです(福田氏が次官に就任した当時については過去記事「財務省の人事から何が読み取れるか?」を参照してください。

サーフィンが趣味という異色の財務官僚だった

 福田氏は昨年7月に佐藤慎一次官の後任として、主計局長から昇進する形で事務次官に就任しました。福田氏は人物的な評価はともかくして、財務省の中では典型的なエリートとして昇進を重ねてきた人物です。1982年に東京大学法学部を卒業し旧大蔵省に入省。10年後の1992年に主計局の課長補佐となった後は、一貫して主計局でキャリアを重ねました。

 財務省の人事においては、主計局のキャリアが長いほど、本流のエリートとみなされる傾向が顕著です。福田氏はその後、主計官に昇進し、主計局法規課長などを務め、主計局次長を経て2015年7月に主計局長に就任しています。
 主計局長から次官というのは財務省では典型的な人事パターンですので、福田氏はまさになるべくして次官になった人物といってよいでしょう。ちなみに福田氏の妻は、元文部事務次官でリクルート事件で逮捕された高石邦男氏の娘ですから、典型的な公務員閨閥といってよいでしょう。

 もっとも歴代の財務省トップは地味なタイプの人が多いのですが、その点において福田氏は少々異色でした。湘南育ちということもあり、サーフィンが趣味で、入省後もたびたびサーフィンに出かけていたそうです。福田氏は司法試験にも合格していますが、学内で配布された合格体験記に革ジャンで登場したという逸話もあるそうです。

 セクハラ疑惑の真偽は不明ですが、その後の対応も含めて、こうした性格が災いしたかもしれません。

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後任次官の有力候補は岡本主計局長だが

 とりあえず次官の代行には官房長の矢野康治氏が就任しますが、矢野氏がそのまま後任次官に昇進するとは限りません。官庁は入省年次が絶対的にモノを言う世界ですが、矢野氏の入省は1985年で、一方、事務次官に次ぐ事実上のナンバー2である主計局長は1983年入省の岡本薫明氏です。

 岡本氏は福田氏と同様、一貫して主計局を歩いた典型的な財務官僚で、経歴の上でも、人事パターンにおいても次官の最有力候補です。順当に考えれば岡本氏が昇進する可能性が高いでしょう。
 しかしながら、今は財務省始まって以来の危機的状況ですし、何より政局がどう動くのかまったく分かりません。番狂わせの人事となる可能性も十分にあります。

 ちなみに矢野氏と同期入省で、現在、国税庁長官を辞任した佐川宣寿氏の代行を務めている藤井健志氏も将来の有力候補とされてきました。次の次官が正式に決定されたタイミングで、矢野氏と藤井氏がどのポストに就いているのかよって今後の人事の流れも変わるかもしれません。

 いずせにせよ、セクハラ疑惑が報じられた後の財務省は、完全に当事者能力を失っています。

 福田氏が本当にセクハラをしていないのであれば、堂々と身の潔白を主張すればよい話です。組織として被害者に名乗り出るよう要求したり、出版社に対して訴訟をチラつかせるというのは、組織として最悪の対応でした。世論次第では、財務省の組織再編といった話が出てくる可能性も否定できないでしょう。

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