株主優待がお得とは限らない

加谷珪一の投資教室 実践編 第1回

 このところ株主優待がブームとなっています。企業によっては、金額換算した利回りが10%を超えるような水準の優待を用意しているところもあります。筆者も株主優待が手厚い銘柄をいくつか保有しており、年間で十数万円分の飲食などをタダで享受しています。

 しかしながら、株式投資の本質を考えた場合、株主優待を理由に銘柄を決めるというのは本末転倒ですから、やり過ぎないよう注意する必要があります。もし本気で投資による資産形成を考えているのなら、銘柄選定の際、株主優待の有無は条件に入れない方がよいでしょう。

自分のお店の商品を自分で消費するのは御法度

 株主になるということは、会社に出資することであり、その金額分だけ会社の所有者になるということを意味しています。つまり、株の持ち分に応じてという条件付きではありますが、投資した会社は自分の所有物となります。

 この話は一般的な商売にあてはめてみれば分かりやすいでしょう。

 もし自分が、あるお店のオーナー(所有者)だったら、ということを想像してみてください。自分のお店に行けば、タダで商品が手に入ります。
 しかし、その商品は自分のお金で仕入れたものであり、本来であれば、何千円、何万円という値段で他人に売ることができたものです。お店のオーナーが自分の商品をタダで使ってしまうというのは、基本的に商売の世界では御法度とされています。

 株主は会社のオーナーですから、株主優待を使って商品を手に入れるという行為は、自分の店の商品をタダで手に入れることと同じになるのです。タコが自分の足を食べるような行為といってよいでしょう。

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配当や株価の上昇で報いるのが本来の姿

 問題はこれだけはありません。株主優待をたくさん提供する企業の経営者は、本来、もっと高い値段で自社の商品を不特定多数に売ることが出来たのに、あえてそれをやらず、株主という身内に配っていることになります。

 ある程度、株主にサービスするという考えはあってもよいですが、一定水準を超えている場合には、それは経営者の自信のなさの裏返しといってよいでしょう。事業でしっかりと利益を上げ、高額の配当という形で株主に報いるのが、本来の経営者の姿です。それができない経営者は、優待でごまかそうとする傾向があります。

 投資対象を選定するにあたっては、最初のうちは、株主優待の有無など考えず、その会社の成長性や配当など、基本的な部分での評価を徹底した方がよいでしょう。投資に値すると評価を下した上で、さらに優待が加わっていればラッキーという程度にとどめておくべきです。

 株式はあくまでリスク資産から、一定のリスクを引き受ける代わりに、株価の上昇や配当という果実を得るのが本来の姿です。先ほど、筆者は優待銘柄をいくつか保有していると述べましたが、もしその企業の経営に少しでも満足できないところが出てきた場合、筆者は、優待の有無にかかわらず、即座に売却します。

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