経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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日米首脳会談で明らかになった通商問題における米国側の狙い

 安倍首相とトランプ米大統領が首脳会談を行いました。事前の予想通り、トランプ氏は日本に対して貿易赤字の削減強く求める発言を行っています。日本と米国の貿易不均衡についてまとめてみました。

日本からの輸出の多くは自動車関連

 首脳会談は2018年4月17日にフロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘で行われました。会談の冒頭、トランプ氏はいきなり貿易赤字の問題に触れ、「均衡を達成したい」と赤字削減を具体的に要請しています。

 会談後に行われた記者会見においてTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に対して消極的な発言を行ったことなどを考え合わせると、トランプ氏の最終的な狙いは、日本と米国との2国間でFTA(自由貿易協定)を締結することにあると考えられます。

 2国間協定ということになると、米国の要求と直接対峙しなければなりませんから、日本としてはかなり厳しい状況に追い込まれるでしょう。結果論かもしれませんが、今回の首脳会談は、米国から今後の貿易協議のあり方について一方的に通告されるという形で終わってしまいました。

 日本と米国は、現在どのような貿易をしているのでしょうか。

 日本は米国に対して年間15兆円ほど製品を輸出しており、逆に米国からは年間8兆円の輸入を行っています(2017年)。日本の対米貿易黒字は8兆円(米国から見た場合、対日貿易赤字が8兆円)ということになります。

 日本からの輸出の4割を占めているのが自動車関連です。日本の自動車メーカーは米国に現地法人を設立して米国で自動車を生産していますが、部品の一部は日本から輸出しています。また大手3社の中でもトヨタのように国内生産比率が50%(グループ全体)近くあるメーカーもありますし、スバルに至っては国内生産比率が75%に達します。

 こうした企業に対しては、米国内での生産拡大に加えて、部品の調達も行うよう圧力がかかる可能性が出てきます。

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エネルギーの輸入拡大が最良の解決策

 自動車に次いで輸出が多いのは機械(3.4兆円)、半導体・電子機器(2兆円)、光学機器(1.5兆円)などです。しかし半導体については、インテルやクアルコムなど米国企業の方が競争力がありますし、機械類は米国からの輸入もあるので、それほど問題視されないと思われます。やはりターゲットになりやすいのは自動車でしょう。

 一方、米国からの輸入でもっとも多いのは食品(1.5兆円)となっており、次いで医薬品・化学製品(1.3兆円)、機械(1.3兆円)と続きます。

 日本と米国は過去何回も貿易摩擦を起こしており、そのたびに交渉が行われてきました。歴史的経緯をふまえると、米国が日本に対して市場開放要求を行う場合、真っ先にターゲットとなるのは農作物です。米国産の米や牛肉などについて輸入拡大を求めてくる可能性は高いでしょう。

 米国は医薬品の輸出に力を入れており、医薬品についても市場開放を強く迫ってくる可能性があります。航空機も米国が強い分野ですから同様の懸念があります。

 日本としては、現在、年間0.7兆円程度しかない天然ガスの輸入を増やすことが、赤字解消の最善策です。日本は資源がありませんから、どのみち天然ガスは輸入しなければなりません。

 以前の米国はエネルギーの輸出を禁じていましたが、シェールガスの開発が進んだことでエネルギーが余剰となっており、他国への輸出を解禁しています。米国産エネルギーの大量購入でトランプ氏が納得してくれれば、日本の産業への影響は最小限となるでしょう。

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