経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経営論

勝てる企業は自社のリソースをよく理解している

加谷珪一の知っトク経営学 第13回
【資源戦略とプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント 後編】

 前回、説明した経験曲線効果を使った分析で明らかになったことは、市場のシェアをどのタイミングで獲得するのかが非常に重要だという点です。急拡大している市場においては、できるだけ早い段階でトップ・シェアになることで、その後の展開をかなり有利に進めることができます。

 世界的な重電メーカーであるGE(ゼネラル・エレクトリック)社は、自社の事業の中で、市場シェアがナンバー1かナンバー2になれるもの以外は手放すという方針を掲げていました。いわゆるナンバーワン戦略ということなのですが、こうした戦略の基礎となったのが、市場シェアとコストの分析なのです。

市場シェアと成長率でマッピング

 早いタイミングで市場のトップ・シェアを握るには、最初は無理をしてでも、多くの資源を投入することが重要となります。こうした事情から、経験曲線効果の話は、企業が持つ資源をどう管理するのかというテーマに拡大していきました。

 そして自社がもつ資源配分を分かりやすい形で図示するためのツールとして編み出されたのが、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)ということになります。

 PPMでは、横軸に市場シェア、縦軸に市場の成長率を取ります。

 市場のシェアが小さく、成長率が高い分野は「問題児」という象限に、市場のシェアが小さく、成長率も低い分野は「負け犬」という象限に分類されます。
 逆に市場のシェアが高く、成長率も高い分野は「花形」となり、市場のシェアが高いものの、成長率が低い分野は「金のなる木」と分類されます。

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市場環境の推移も考慮に入れる必要がある

 基本的には花形の分野をしっかりと維持し、金のなる木の分野で得られた資金を問題児の分野に回し、シェアを拡大させるといった方策が考えられます。

 PPMに関するほとんどの図版は、横軸と縦軸が普通の目盛りになっていますが、もともとボストンコンサルティング・グループが開発したマトリックスは対数になっています。なぜなら、PPMの元になった概念は、前回、説明した経験曲線効果であり、これは対数グラフが基本となっているからです。

 市場のシェアが少し上昇しただけではダメで、圧倒的にシェアが拡大しないと、所定の効果は得られないという点には注意が必要です。

 企業経営にPPMを応用する場合には、自社がどの位置にいるのかしっかりと把握することが重要でしょう。

 当然のことですが、もっともよくないのは負け犬のエリアであり、この状態は一刻も早く脱却しなければなりせん。一方、有望なグループで業績が悪い(問題児)であることと、有望ではないグループで業績がよい(金のなる木)ことのどちらがよいのかは一概には決められません。

 今は金のなる木の領域だったとしても、市場環境が変わって成長分野となり、花形に変わることがあるからです。もしそうなった場合には、問題児の中で成績を上げるよりも効率的かもしれません。

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