順番こそが情報分析の成否を分ける

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第9回

 公開情報を上手に扱うためには、情報が持つ特徴をよく知ることが重要です。その上で、どういった順番でその情報を生かしていくのかを考えるとよいでしょう。

基本は「大」から「小」へ

 前回、解説したマトリックスを例に取ると、情報の大きさ(粒度)という部分においては、マクロ情報からミクロ情報へ、情報の種類という点ではデータからストーリーへという順番で活用する方が効率的です。

 ある物事について知ろうと思ったら、まずはマクロなデータを探しておおよその全体像をつかみ、その後、個別の話に落とし込んでいきます。この基本的な順番を守らないことが原因で、多くの人が、間違った形で物事を認識してしまいます。

 例えば、取引先の企業のことを調べるケースを想定してみましょう。

 ある企業について知りたいと思う場合、皆さんはどうするでしょうか。人からその企業の評判を聞いたり、ネットでその企業のことを検索したりするというパターンが多いと思います。

 マクロからミクロ、データからストーリー、という流れで考えれば、その企業についての評判を聞く前に、その企業がどのような規模でどんな業務を行っているのか把握することの方が重要です。

 上場企業であれば、基本的な財務諸表はすべて公開されています。Yahoo!ファイナンスのようなサイトに行けば、簡単にその会社の財務情報が手に入ります。最低限の情報として、その企業の売上高と従業員数をしっかり把握するだけでも、その企業に対する理解は大きく違ってきます。

 例えば、2015年3月期におけるトヨタ自動車の従業員数はおよそ34万人、NECは約10万人でした。売上高を従業員数で割ると、1人あたりの売上高が計算できます。トヨタ自動車は約8000万円、NECは3000万円です。

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1人あたりの売上高は収益力との相関性が高い

 両社は作っているものが違いますから、単純に比較することはできませんが、マクロ的な情報を活用する段階では、細かいことにこだわると、むしろ全体像をぼやけさせてしまいます。

 1人あたりの売上高の大きさは、その企業のおおよその収益力に比例すると考えて差し支えありません。トヨタ自動車は同じ製造業でも、NECの2倍以上の収益力があると判断できますし、現実の営業利益率も2倍以上の差がついていました。細かい財務の知識がなくても、売上高と従業員数という情報さえあれば、その会社の体力はおおよそ推測することができるのです。

 収益力が高いということは、付加価値の高いモノを作っているか、コストが安いかのどちらかです。トヨタの場合には、基本的には前者ということになるでしょう。逆に収益力が低い場合には、付加価値の高いビジネスに転換するか、人員削減などを行って1人あたりの収益力を高める以外に方法はありません。

 ちなみにNECは2018年になって、3000人の人員削減を軸とするリストラ策を表明しました。おおまなか数字を把握していれば、細かいニュースを追わなくても、いずれNECが人員削減に追い込まれることは、ある程度、予想できたわけです。

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