自分の立ち位置を理解せよ

加谷珪一の知っトク経営学 第11回
【ドメイン戦略】

 ドメイン戦略とは、自分がどのような事業ドメインで戦うのかについて特定するためのものです。ドメインとは、一般的に組織の活動の範囲や領域のことを指していまが、乱暴に言ってしまえば「何屋さんなのか」ということです。

同じ業種でもドメインが異なるケースがある

 製造業なのかサービス業なのかという違いも、広い意味ではドメインの違いということになりますが、経営戦略の分野でドメインという言葉が使われる時は、もう少し細かな違いとして取り扱われます。
 
 例えば同じメーカーといっても、消費者向けの製品を作っている企業と、企業向けの商品を作っている企業とでは、その事業内容は大きく異なっています。小売店というビジネスも、郊外型の大規模店舗と都市型のコンビニでは、販売する商品の種類や売り方、価格設定はまるで異なります。

 同じ業種に属していても、これらは皆、異なるドメイン戦略を持った企業と考えることができるでしょう。

 同じ製品を扱っていたとしても、同じ事業ドメインとは限りません。仕事の進め方が異なっているというケースがあるからです。

 消費者向け製品を作っているメーカーであっても、どのようにして製品を製造するのかは企業によってバラバラです。開発から製造まですべてを自社工場で完結する企業もありますし、工場を一切持たず、製造のすべてをアウトソーシングするファブレス企業もあるわけです。これらは同じ製品を扱うメーカーといっても、やはり異なる事業ドメインに属しています。

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ドメインの決定は経営者における仕事の根幹

 自社工場を持っている企業の場合、部品のほとんど外部から調達するケースもあれば、すべてを内製するところもあります。

 少し意外な印象を持つかもしれませんが、米国の自動車メーカーはかつて自動車用の鋼板まで内製していた時代がありました。これに対して後発だった日本の自動車メーカーは、鋼板は鉄鋼メーカーからの調達に絞り、自らは自動車の組み立てに専念するという戦略を採用したのです。

 今でも日本メーカーと米国メーカーを比べると、日本メーカーの内製率はあまり高くありません(系列という形で資本関係があるところから調達するという点は考慮に入れる必要がありますが、別な会社という意味では外注になります)。

 これとは逆に、ファスナーでは圧倒的なシェアを誇るYKKは、他社からの参入を防ぐため、製造装置まで自社開発するという徹底ぶりです。同じ部品の内製・外注といっても、そこには様々な事業ドメインが存在しているわけです。

 どこの事業ドメインで勝負をするのかは、経営における最重要事項のひとつであり、これが曖昧になると経営戦略もあやふやになってしまいます。勝負するドメインを決めるのは、まさに経営者の根幹といってもよい仕事なのです。逆に言えば、これがしっかり出来ていない人は、経営者として失格ということになります。

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