投資の世界におけるリスクと一般社会のリスクは意味が違う

加谷珪一の投資教室 第22回

 長期投資は短期投資に比べてリスクが少ないという話を耳にすることがあります。筆者もどちらかというと、短期的な投資よりも、長期的な投資の方を推奨する立場といってよいでしょう。
 
 しかしながら、長期的な投資だからといって短期的な投資よりも安全ということにはなりません。どんな期間で投資をするにせよ、得られるリターンに比例してリスクは大きくなります。この原理原則からは逃れることはできないのです。

 しかしながら、ある一定の条件下では長期投資の方がリスクが低いと説明することは可能です。その理由は、金融理論におけるリスクの定義と、一般社会におけるリスクの定義が異なっているからです。

 一般の人は、投資した金額が減ってしまうことをリスクと呼んでいるはずです。このためリスクが低いと聞くと、お金が減る確率が低い、つまり、損をしないと考えてしまいます。
 ところが金融理論におけるリスクという概念はこれとは異なっています。金融理論におけるリスクとは、1年間の間に、ある一定確率で株価が上下変動する範囲のことを指します。つまり株価のブレのことをリスクと定義しているのです。

 長期投資になると投資期間が長くなるため、1年当たりのブレ幅は小さくなり、見かけ上のリスクは低下することになります。この話をもって長期投資はリスクが低いと説明しているのです。しかしながら、これはあくまで1年当たりのブレ幅のことであって、投資資金がなくなってしまう可能性のことを示しているわけではありません。

 長期投資であろうが、短期投資であろうが、同じ投資対象なら同じように資産を失ってしまう危険性があるのは当然のことです。

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 確率は低いですが、毎年5%の株価下落が10年続いてしまえば、株価は4割程度になってしまいます。この段階から損を取り返そうと思っても、過大なリスクを取らない限り、現実的にはほとんど不可能といってよいでしょう。

 ところが一部の証券会社などは、このカラクリを分かった上で、あえて長期投資はリスクが低いと説明し、投資信託などの販売推奨につなげているケースがあります。こうしたセールストークをそのまま受け止めてしまうようでは、良い投資はできません。

 繰り返しますが、筆者はどちらかというと長期投資を推奨する立場です。しかし、一般的な傾向として、長期投資を好む個人投資家は、長期投資が過度に堅実で安全なものとを考えてしまいがちです。先ほど説明したように、この話は真実ではありません。

 長期であれ短期であれ、同じリターンの銘柄が持つリスクは同じであり、両者に本質的な違いはないのです。

 しかしながら、短期になればなるほど、偶然によって成績が決まる割合は高まってきます。長期の場合にはトレンドが予測しやすく、産業セクターの伸びもある程度までなら見通すことができます。時間を味方に付けられるという意味でも、個人投資家にとっては長期投資の方が望ましいでしょう。

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