貧困は自己責任なのか?(後編)

 前回は、日本の貧困がかなり深刻なレベルになっていることや、生活保護の捕捉率が低く、支援を必要する人の多くに行き渡っていない現実について解説しました。後編の今回は、なぜ日本で貧困が深刻になっているのか、その根本的な原因について探っていきます。

日本人の年収は、事実上半分になってしまった

 結論から言うと、日本で貧困が深刻化している最大の原因は、日本全体が貧しくなっていることです。皆で分けるパイが小さくなっていますから、その中で経済的に不利になっている人の生活が悪化するのは、当然といえば当然の結果かもしれません。こうした状況で、責任のなすりつけ合いをしても、何の問題解決にもなりません。

 具体的に見てみましょう。

 現在の日本における1人あたりのGDPは約400万円となっています。この数字は過去20年間であまり変わっていないのですが、米国は1.9倍、ドイツは1.6倍など日本以外の国は1.5倍から2倍に拡大しました。

 1人当たりのGDPは基本的に平均年収に近いと考えてよいものです。つまり、「日本人」という社員は、20年間、年収が400万円のままでしたが、同期の社員は皆、600万円から800万円になったことを意味しています。しかも世界の物価水準は、年収が上がった人たちを基準に上昇していますから、日本人は過去20年間の間に、半分のモノしか買えなくなったわけです。

 よく知られているように、日本は資源がまったくない国ですから、貿易で経済を成り立たせています。日本は年間約75兆円のモノやサービスを輸入していますが、このうち食料は約7兆円、エネルギー関連は16兆円に達します。日本は農業を行うにも石油を輸入する必要がありますから、購買力の低下は日本経済を直撃してしまいます。

keizaisuitai

国家である以上、貧困は全国民共通のテーマ

 経済が活性化しなければ税収も増えませんから、貧困対策に回す予算も確保できません。政府や自治体は「水際作戦」と称して、生活保護の申請をできるだけ却下するよう、役所の窓口に対して指導しているともいわれます。これは本来、あってはならないことですが、そうでもしなければ、財政が破綻してしまうというのも事実なのです。

 こうした状況において、貧困は自己責任だとして、経済的に苦しい人を責めても問題は解決しません。

 確かに貧困に陥っている人の中には、他の人に比べて努力が足りなかった人もいるのかもしれません。しかし、努力しなかった人でも、最低限の生活が送れるようでなければ、先進国として国家(つまりチーム)を運営する意味がなくなってしまいます。また貧困を放置すると、消費が上向かず、貧困に陥っていない人にも影響が及ぶことになります。

 もし、貧困問題がある種の「甘え」や「怠惰」から来ているのだとすると、それは、貧困に陥った本人はもちろんのこと、日本全体を豊かにする努力を怠った私たち全員に当てはまるものといえるでしょう。

 貧困に陥った人を「助ける」「助けない」といった視点で物事を考えるのではなく、相対的に低い所得になったとしても、一定水準の生活は確保できるという、強い経済を実現することこそが、国家として何よりも重要です。