加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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成長戦略に突然、コーポレートガバナンスが盛り込まれた理由

 

 安倍政権は2014年6月24日に新しい成長戦略を閣議決定しました。何度も何度も成長戦略が出てくるので、おそらくほとんどの人は何が何だか分からない状態でしょうし、安倍政権が意識しているといわれる外国人投資家はなおさらでしょう。

 それはともかく、今回の新成長戦略には、これまで日本の会社が頑なに拒否してきたコーポレート・ガバナンスの強化がうたわれています。株主の意向をより経営に反映させようという試みです。

株主軽視の何が問題なのか?
 日本では小泉政権の時代、コーポレートガバナンスの強化が提唱されましたが、企業側の抵抗で挫折してきたという経緯があります。日本企業の経営者はほとんどが社員からの生え抜きとなっており、経営者は株主のことをほとんど意識していません。

 本来であれば、会社に出資した株主がそのような状態を放置しているはずがないのですが、日本の場合には、株式の持ち合いといって、大企業どうしが株を融通し合い、お互いの経営には口を出さないという暗黙の了解が出来ています。
 したがって会社の経営に意見のある株主は少数派であり、会社の経営に口を出すことに対しては、社会から批判されることすらあったわけです。

 もちろん株主の多くがそれでよいということであれば、何の問題もないのですが、そうした企業が株式を上場していると大きな問題を引き起こします。株式を上場するということは、「自由にウチの会社の株を売買して、自由にウチの会社の経営に口を出して下さい」と世界に宣言することと同じです。

 そうであるにもかかわらず、株主の意向を無視した経営を続けていると、当然、「おかしいのではないか?」という声が出てくることになります。特に日本企業の株を買った外国人投資家から見るとなおさらです。

 世界には大企業になっても、外部からの干渉を嫌い、株式を上場しない会社はたくさんあります。しかし日本の会社は、なぜか皆、株式を上場したがり、その一方で、株主からの口出しを嫌うのです(その理由は上場した方がお金を調達しやすいというところにあると考えられます。要するにカネだけは欲しいのです)。

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きっかけは尻に火が付いた年金運用という皮肉
 こうした諸外国からは理解不能な慣習が存在していることが、日本市場低迷の原因のひとつといわれてきたのですが、安倍政権ではこれを改めようとしているわけです。

 具体的には社外取締役を義務付けたり、コーポレートガバナンス・コードを導入するということが検討されているのですが、すでに日本の公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、こうした動きを背景に、株主の意向を投資先企業に反映させるための「指針」の導入を表明しています。

 これまで頑なに株主からの口出しを嫌ってきた日本社会が、なぜ急にコーポレートガバナンス、コーポレートガバナンスと騒ぎ出しているのか、少し奇異な感じもしますが、そのヒントはこのあたりにありそうです。

 つまり年金財政がかなり危なくなってきているのです。わたしたちの年金は現在120兆円ほどの積立金があり、GPIFがこれを運用しているのですが、今のままの利回りでは、支払う年金額が多すぎて、毎年3兆円もお金がなくなっていく状態なのです。

 企業に圧力をかけ、もっと配当を増やしたり、株価を上昇させないと、年金の維持ができなくなっているのです。年金が維持できなくなると、政府は国民から反発を受け、大変な事態に陥ってしまいます。こうした事態を回避するためには、何でもやるというのが政府のホンネです。

 理由はともあれ、日本でも少しはまともなコーポレートガバナンスが確立するのであれば、それはそれでよいことなのですが、そのきっかけが、破綻寸前で尻に火が付いた状態の年金運用というところが何とも皮肉です。それも「この国のかたち」ということなのでしょうか?

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