マイナス金利の負担が国民にも及び始めた!

 国民による直接的な負担はないとされてきたマイナス金利政策ですが、徐々に私たちの生活に影響を及ぼし始めています。ひとつは公的年金の問題、もうひとつは銀行の口座維持手数料です。

 公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は昨年末、銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めました。

 GPIFは現在、150兆円を超える資産を運用しているのですが、すべてが株式や債券になっているわけではなく、ある程度の現金も保有しています。2019年9月末時点における現金を含む短期資産の残高は約14兆円でしたが、従来なら、現金を保有していても大した問題にはなりませんでした。こうした状況を大きく変えたのがマイナス金利政策の導入です。

 GPIFが保有する現金は、みずほフィナンシャルグループ系列の信託銀行に預けており、信託銀行は日銀の当座預金に資金を預けています。マイナス金利導入後、日銀は当座預金の一部に対してマイナス金利を設定しました。

 マイナス金利というのは口座維持手数料のようなものであり、預金が存在するだけで、残高に対して一定額が徴収されてしまいます。

 GPIFは詳細を明らかにしていませんが、低金利が原因で償還された国債の再投資ができず、結果として信託銀行に預ける現金残高が急増したものと考えられます。GPIFの資金を預かる信託銀行はこの負担に耐えきれず、GPIFに金利分を負担するよう要請したわけです。

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 マイナス金利政策の導入が決まった際、日銀は一般預金者に影響が及ぶことはないと説明していましたが、公的年金は私たち加入者の財布そのものです。間接的とはいえ、国民の財産からマイナス金利分を負担するということですから、実質的に国民がマイナス金利を負担したことと同じと考えてよいでしょう。

 GPIFが手数料を負担したからといって年金の給付額に影響が出るわけではありませんが、この状況が長く続いた場合、運用上の制約条件が増え、最終的には運用成績に影響を与える可能性もゼロではないのです。

 しかも、話はこれだけにとどまりません。銀行業界は、一般消費者に直接負担を求める施策についても検討を始めています。メガバンク各行は口座維持手数料の導入について準備を進めており、近く何らかの形で口座維持手数料が導入される可能性は高いとみてよいでしょう。

 口座維持手数料は海外の銀行では珍しいものではなく、預金残高が一定額を下回ると手数料が発生します。メガバンク各行の利ざや(預金金利と貸し出し金利の利回り差)は1%を切る状況となっており、もはや一般的な融資だけでは収益を上げられなくなっています。

 その点、口座維持手数料は口座があるだけで収益となり、景気にもあまり左右されません。銀行にとっては「根雪」のような存在であり、非常に魅力的な収益源です。日銀の中曽宏副総裁は昨年11月の講演で「日本の金融機関はサービスに対して適正な対価を得ていない」いう趣旨の発言を行っており、口座維持手数料導入の地ならしは着々と進んでいるようです。

 もし銀行が口座維持手数料の導入に踏み切った場合、名実ともに、マイナス金利の影響が直接、預金者に及ぶことになります。