経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

メディア・リテラシーの必要性

 マスメディアから情報を得る時には、いろいろと注意が必要です。
 マスメディアは真実を報じないといったレベルの話以前に、事実関係をベースにした報道においても、いろいろなクセがあるからです。
 ニュースを読み取るリテラシーを身に付けているのといないのとでは、状況は大きく変わってきます。

ニュースの内容に対して求めるものが違う
 例えば、景気に関する報道では、日本と米国で基本的な切り口がまったく異なっているということをよく理解しておく必要があります。このことを知らずに、日本と米国の景気の動向を180度逆に解釈している人もいたりしますから、要注意です。

 日本では、基本的に政府の行っていることに対して、ネガティブな切り口で報道することはあまり好まれません。これは政府からの圧力があるということよりも、どちらかというと読者がそういった切り口を望むのです。

 マスコミもしょせんはただの商売です。新聞であれば部数がすべてですし、テレビは視聴率がすべてです。読者や視聴者が望まない論調はあまり報道されないのです。

 日本人は、為政者がうまくやってくれていると思いたいという気持ちが強く、記事にもそれが反映されます。

 一方、米国は指導者に対する尊敬の念は日本よりもはるかに強いのですが、その一方、指導者に対する要求はかなり高くなっています。また、現状について評価する際にも、昨年と比較するのではなく、もっとも状況がよかった時と比較する傾向が強いという特徴があります。

 例えばGDPの成長率がプラス2.0%だったとします。日本は前年比で2%のプラスで、景気刺激策の効果が出てきた、あるいは日本経済の底力が発揮されてきたというトーンになります。
 しかし米国の場合には、昨年と比べてどうかということよりも、最近であればリーマンショック前と比べてどうかという点が基準になりますから、むしろプラス2.0%で当たり前といった論調です。

NYSE01

米国は最悪の状態で日本は絶好調?
 株価についても同様です。米国のダウ平均株価はリーマンショック前には1万4000ドルあったのですが、リーマンショックでは一時7000ドルまで下落しました。現在は1万6000ドルを超えていますが、1万4000ドルを超えたのはつい最近のことです。

 それまでは、米国の株価は最悪な状態であると報道され続けていました。米国人にとって、今よりも株価が高かった過去があるというのはガマンができないのです。

 一方、日経平均株価はリーマンショック前には1万7000円でしたが、リーマンショック後は7000円台まで落ち込み、現在も1万5000円台とリーマンショック前を回復していません。しかし、報道ではアベノミクスで株高!というトーンが主流です。

 さらにいえば、日本の場合、バブル時には日経平均が4万円に到達する状況でした。過去を基準にするなら、当時の株価の半分も回復していません。
 米国でこのような経済運営を行えば、おそらく反乱が起こるレベルですが、日本人は為政者に対して極めて寛容です。というよりも、基本的に日本人の要求水準はかなり低いのです。

 日本のメディアの報道は、日本国内については上記のように、前向きな論調が主流になるのですが、米国に関する報道については、米国のマスメディアの報道内容が基準となります。

 米国の景気と日本の景気が同じタイミング報じられる時、場合によっては奇妙なことが起こります。米国の方が圧倒的に経済的状況が良いのに米国については悲観的で、米国よりはるかに状況の悪い日本が楽観的なトーンになるのです。

 この報道の基本的な仕組みを知らずに、単純にニュースの論調だけで状況を判断した人は、米国の景気が悪く、日本の景気が順調と判断してしまうかもしれません。

 実際、リーマンショック後には、そのような報道が続いていました。米国からは悲観的な話ばかり聞こえてくるのに、失業率はどんどん下がり、株価は史上最高値を更新していきました。一方、日本は非常に明るい話題ばかりなのですが、リーマンショック前の水準すら回復していません。

 簡単に見えるニュースでも、その内容を正確に理解するのは、なかなか難しいのです。

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