経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 社会

予想された通り、受動喫煙法案は事実上骨抜きに

 以前から予想されていたことではありますが、受動喫煙防止法がほぼ骨抜きになりそうです。このまま法案が成立すれば、東京オリンピックをきかっけに諸外国並みの受動喫煙対策を講じるというシナリオは完全消滅しそうです。

 厚生労働省は2018年1月30日、事業者に受動喫煙対策を義務付ける健康増進法改正案(いわゆる受動喫煙防止法)の素案を公表しました。

 政府は、東京オリンピックの開催を控え、公共の場所を原則禁煙とした本格的な受動喫煙対策の導入を検討してきました。日本の受動喫煙対策は、先進国では最低レベルという状況であり、司法判断においても受動喫煙は吸わない人に対して危害を加える行為であるとの見解が示されています。対策の実施は待ったなしという状況でしたが、コトはそう簡単に運びませんでした。

 公共の場所を原則禁煙とする受動喫煙防止法案の概要が示されると、自民党内から反対の声が続出。与党内で意見の取りまとめができず、法案が提出できないという状況が続いてきました。ようやく新しい素案が出たわけですが、その内容は驚くべきものでした。

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日本は事実上禁煙を放棄した扱いになる可能性
 法案における最大の争点となっていた小規模飲食店の取扱いについては「喫煙」「分煙」と表示すれば喫煙が可能となりました。これまで受動喫煙防止法は原則禁煙を前提に議論が進められてきましたが、この大前提が崩れてしまったわけです。

 具体的な店舗面積については示されていませんが、当初、30平方メートル以下だったところが、150平方メートル以下まで拡大された模様です。都内にある飲食店の9割は150平方メートル以下ですから、ほとんどの店で喫煙が可能となってしまいます。

 また学校や医療施設についても、当初は敷地内禁煙でしたが、素案では屋外に喫煙場所を設置することが可能となりました。原則禁煙という文言は残っていますが、これでは事実上、禁煙を撤回したことと同じといってよいでしょう。

 最終的にこの形に法律がまとまった場合、日本は事実上、禁煙を放棄したという扱いになることはほぼ間違いありません。

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