経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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低周波騒音と健康被害の関連性が指摘される、対策は進むか

 これまで日本ではほとんど顧みられることがなかった低周波騒音による健康被害に焦点が当たるようになってきました。消費者庁の消費者安全調査委員会が、ガス会社などが販売する家庭用ガス発電システムについて、健康被害との関連性を指摘する報告書を出したからです。

 「エネファーム」や「エコウィル」といった商品名で知られる家庭用ガス発電システムは、その構造上、100ヘルツ以下の低周波音を発生させます。低周波音の影響は個人差が大きく、何でもない人にはまったく気にならない一方、一部の人には不眠や頭痛といった深刻な健康被害が発生するといわれています。日本ではこのような低周波騒音に関して、まったく規制がありませんから(参照値のみ)、すべては事業者側に任されている状況です。

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 消費者安全調査委員会が現地調査を行ったところ、5件で運転音が症状に影響している可能性が高いことが分かりました。同委員会が2017年12月に出した報告書では、健康被害との関係について「否定できない」と結論付けています。同委員会では「エコキュート」などの名称で販売されている家庭用ヒートポンプ給湯機についても似たような指摘を行っています。

 今回の調査結果を受けて調査委員会では、ガス会社やメーカーに対して運転音の低減を要請するとともに、こうした症状が発生する可能性について消費者に周知する必要があると指摘しています。

 音の問題は個人差が大きく、解決が難しいといわれていますが、もっとも理想的なのは、技術を駆使して騒音そのものを軽減することです。
 報告書では防音エンクロージャやANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)システムを活用することで、条件よっては騒音を軽減できることが示されています。能動的なノイズ軽減手法に関する技術は難易度が高く、低コストで実装するのは簡単ではありません。しかし、エネルギーを有効活用する機器は、これからの時代にふさわしい製品ですし、難易度が高いからこそ、日本の技術力を存分に発揮できる分野であるともいえます。

 こうした機器類に騒音被害が発生する可能性があることを社会として認知し、技術を駆使することで、騒音問題を克服していくという努力が企業にも社会にも求められています。

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