加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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個人金融資産がムダになっているという麻生大臣の発言から読み取れること

 

 1600兆円の個人金融資産に関する麻生財務大臣の発言が話題になっています。日本はお金が有効活用されていないという話なのですが、この問題は小泉政権の時から議論されているにもかかわらず、いまだに解決していません。

日本人は圧倒的に銀行預金偏重
 麻生大臣は6月13日の記者会見で、1600兆円を超す個人金融資産について言及し「半分以上が現預金になっている。資産の半分以上を現預金で持っているという先進国などない」と発言しました。

 麻生氏の発言内容はまさにその通りです。日本における2013年末の個人金融資産は約1650兆円なのですが、このうち874兆円が現預金となっています。米国における現預金の割合は13%、欧州は35%ですから、確かに日本の現預金の比率は突出して高くなっています。

 小泉政権の時代から、政府は「貯蓄から投資へ」という掛け声の下、現預金偏った金融資産の株式へ流入を促そうとしてきました。しかし、十数年経った今でも状況はほとんど改善していません。

 日本人が株式投資を敬遠するのは、日本の証券市場が投資家にとって信頼性に欠けることが原因のひとつであると麻生氏は述べています。

 確かに日本の証券市場は、米国の株式市場に比べるとボラティリティ(株価の変動)が高く、安心して運用できる環境にはありません。また一部の証券会社は、強引な勧誘など、顧客の信頼を損ねるような営業活動をしていたこともあります。

 しかし最近ではネット証券が普及し、投資家は自分の意思に従って投資ができる環境が整っています。またネットの普及で企業の情報提供の水準も格段に向上しました。
 それでも、日本の株式市場における売買高の7割は外国人投資家というのが現実です。日本人が株式に投資しないのは、それだけが原因ではなさそうです。

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日本人が株に投資しない本当の理由
 短期的な売買は別にして、株式投資は基本的にビジネスに対する投資です。自分がいいと思うビジネスに対してリスクを取って資金を投資し、その成長に賭けるという行為になります。

 つまりリスクを取って新しいビジネスをするという行為に対して、日本人はあまり積極的になれないのです。
 結果的に短期的に利ざやを稼ぐ投資家による投機的な売買が中心となってしまい、こうしたビジネスに対してお金を投じる投資家がますます近寄らなくなるという結果につながっています。

 以前、麻生氏と同じように、日本人は株式への投資の割合が低すぎると力説していたある人物に、筆者はどんな投資をしているのか訪ねたことがあります。驚くべきことに、その人はまったく株式投資をしたことがありませんでした。日本人にとって、株式投資をすべきだというのは、やはりタテマエのようです。

 この図式は、ベンチャー企業の発展が重要だと多くの人が力説し、その支援をする仕事はたくさん生まれてくるのですが、肝心の起業家になる人材がいないという状況と同じものです。

官主導の経済運営が続く限り、状況は変わらない
 こうした風潮は多くの産業を規制で保護し、官主導で運営する日本の経済・産業システムそのものに起因しています。

 しかも、そうした既得権益を持つ人の一部は、自身へのエクスキューズという形で、株式投資の活性化やベンチャーの活性化を主張しますから、状況はさらにやっかいになります。

 麻生氏の発言内容そのものは正しいのですが、問題の元凶は、麻生氏自身が大臣を務める霞が関の官僚組織にあるという点で、非常に矛盾しています。

 税制など政策を変更することによって、ある程度株式市場に資金を流すことは可能ですが、最終的にはこうしたリスク投資に対する国民の気持ちが成熟し、官主導の経済運営が変わらない限り、金融資産の構成割合が大きく変わることはないでしょう。

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