経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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人口減少に備えコンパクトシティ政策が動き始める

 人口減少に備え、住宅や公共施設を利便性の高い中心部に集約するコンパクトシティと呼ばれる政策が徐々に動き始めています。地味な話題ですが、今後のビジネスや投資に大きな影響を及ぼすことになりますから、関心を持っておくべきでしょう。

 人口が減少する場合、同じ人口分布のままで人の数だけが減るわけではありません。人は経済活動を行って生活しているので、一定以上の人が集まっていないと経済圏を維持できなくなります。このため人口が減ると、より便利なところに人が集まってくることになり、人口動態に大きな変化が生じます。

 場合によっては限界集落のようなところが出てきてしまうわけですが、残念ながら人口が減っている以上、こうした動きを止めることはできません。もしそうであるならば、行政が人の移動を促し、スムーズに人口を集約させた方が圧倒的に高い効果を得られますし、取り残されてしまう人を支援することもできます。こうした考えに基づいて行われているのがコンパクトシティと呼ばれる政策です。

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 都市再生法や地域公共交通活性化再生法など関連法整備も進んでいますが、実際にこの政策を遂行するのは簡単ではなく、状況はあまり進展していません。
 国土交通省ではこうした状況を受けて、中心部に機能を集約する施策を重点的に支援する方針を固めました。新聞報道によると、都市機能誘導区域の集約度が高ければ高いほど、補助金を受け取りやすくするといった施策が検討されているようです。

 地味な話題ですのであまり気に留めない人も多いのですが、ビジネスや投資をする人には非常に大事な情報です。これからは、都市機能の集約が一気に進む可能性があります。郊外から都市部へのシフトが進めば、都市部の不動産価格が上昇する一方、郊外の価格は大きく下落することになります。商圏という点でも、機能集約が進んだ狭いエリアが活況を呈し、それ意外の地域は衰退が進む可能性が高まります。

 こうした流れには様々な意見があると思いますが、人口減少社会においては都市部への人口集約を避けて通ることはできません。これを大前提にすべての計画を立てるという現実的な視点が必要となってくるのです。

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