加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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自動車業界に地殻変動の兆し。とうとう山が動き出すのか?

 

 自動車業界に無視できない動きが出てきています。これまで自動車業界はあらゆる産業を支える屋台骨のような存在でしたが、とうとう大きな山が動き出したかもしれません。

トヨタがエコカー戦略を大転換
 トヨタ自動車は11月17日、電気自動車(EV)の開発を担う社内ベンチャーを発足すると発表しました。あまり大きな話題にはなっていませんが、これは見方によっては、従来のトヨタの戦略を根本から変えてしまうほどのインパクトを持っています。

 同社はこれまで、次世代のエコカー戦略について、燃料電池車(FCV)とハイブリッド車(HV)を中核技術として位置付けてきました。特にFCVについては、日本の国策にもなっており、全国に水素ステーションを建設する計画まで浮上しています。しかし世界ではEVがエコカーの主役となりつつあり、FCVは完全に劣勢です。今回のEV対応はこうした現実を受けての措置になります。

 もちろんトヨタは世界最大の自動車メーカーですから、あらゆる製品ラインナップを揃えておく必要があります。EVが相対的に有利になってくるのであれば、それに対応した製品を開発しておくのは、ごく当たり前のことといってよいでしょう。しかし、今回の決定はそれ以上の大きな意味を持っています。

 その理由は、トヨタがすでに米国の会社になってしまっているという現実を、まざまざと見せつけられたからです。トヨタの稼ぎのほとんどは海外市場となっており、国内販売はもはや全体の4分の1に過ぎません。その中でも米国は同社にとって主戦場となっており、米国市場あってのトヨタなのです。

 米国ではエコカーに対する期待感が強く、環境意識が特に強いカリフォルニア州では、販売台数の一定割合をエコカーにするという規制があります。従来はHVもエコカーの対象でしたが、2018年からは対象外となってしまい、トヨタはHVをエコカーとして打ち出せなくなりました。
 米国がEVに舵を切っている以上、そこに合わせていくのは企業としては当然のことです。しかし、これは裏を返せば、トヨタはもはや日本の会社ではないということに他なりません。さらにいえば、今後の自動車産業の行く末は、世界最大の市場であり、かつIT大国でもある米国の動向で決まってしまうと言い換えることもできます。

toyotatenkan

産業構造転換は最初のうちは水面下で進行する
 EVへの流れは日産の経営にも大きな影響を与えています。日産は11月22日、系列の自動車部品メーカーであるカルソニックカンセイの株式を売却すると発表しました。系列の部品メーカーを完全に売却してしまうというのは尋常ではありません。

 この背景にあるのは、やはりEV化への流れです。EVは内燃機関と異なり、誰でも簡単に製造が出来てしまいます。自動車がEVになってしまうと、工業製品としての付加価値は一気に減少してしまうのです。もし本格的なEV社会が到来した場合には、自動車メーカーは、充電インフラや自動運転技術などを包括した総合サービス企業に変貌しなければ、もはや生き残っていくことはできません。

 つまり産業構造が根本から変わり、従来のサプライチェーンが意味をなくしてしまうのです。日産の決断はこうした部分まで見据えたものと判断することができるでしょう。

 これまで自動車業界は完全に垂直統合の世界で、IT業界のような産業構造の転換は起こらないとも言われてきました。しかし、EVの普及や自動運転技術の発達は、こうした状況を徐々に変えつつあります。産業構造の転換は通常、水面下で徐々に進むことがほとんどです。そしてある時、堰を切ったように、業界再編などの形で顕在化することになります。

 自動車業界が本当にそうなるのかは分かりませんが、企業の変化を先取りする株式市場の世界では、すでにこうした流れを見据えた動きが出てくる可能性があります。2017年は自動車業界にとって、大きな転換点となる年かもしれません。

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