加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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グーグルの事故から考える自動運転車の安全性

 

 グーグルの自動運転車が事故を起こしていたことが明らかとなり、あらためて自動運転車の安全性に注目が集まっています。
 これまでにない新しい技術ですから、慎重な対応が求められるのは当然ですが、過剰反応するのも考えものです。果たして自動運転車の安全性はどのくらいなのでしょうか。

14回の事故は多いのか少ないのか?
 グーグルは2015年7月、同社が開発中の自動運転車が、信号待ちをしている時に後続車から追突され、社員3人がケガを負ったことを明らかにしました。自動運転車側に責任はなく、単純な追突事故だとしています。

 ただ、今回の事故をきっかけに、これまでの事故の実績について関心が高まる結果となり、結局同社は、6年間で14回の事故を起こしていたことを認めました。いずれも事故は軽微で、自動運転車側に過失はないとしていますが、詳細な情報は明らかではありません。

 14回もの事故と聞くと「自動運転は危険なのでは?」と思ってしまいますが、事故率が高いのか低いのかは、どれだけの距離を走ったのかを考慮しなければ判断できません。

 同社は2009年から自動運転車の開発をスタートし、2014年からは公道を使った実験に移行しています。実験で走ってきた累積の走行距離は約180万マイル(約290万キロ)ですから、約21万キロ走ると1件の事故が発生する確率ということになります。安全性について判断するためには、この数字が多いのか少ないのかについて、検証する必要があるわけです。

 米国における自動車事故の発生確率は、50万キロに1件程度といわれています。米国を基準にすると、グーグルの自動運転社の事故率は高いということになります。ただ、この数字は初期段階の実験走行を含めた数字ですから、この成績は時間を追うごとに向上している可能性が高いと考えられます。現時点では、すでに平均値を下回っているかもしれません。

 日本はどうでしょうか。これにピッタリ該当する統計データはありませんが、関連情報から推定することは可能です。損害保険会社の業界団体では、毎年の保険料収入や保険金の支払い状況を公表しています。基本的に事故と認定されなければ保険金は下りませんから、保険会社の情報から、事故の件数などを知ることができます。
 また、自動車の平均走行距離などの各種統計を合わせることによって、何キロごとに事故を起こしているを推定することが可能です。結果は米国と同じで、日本でも約50万キロに1回の割合で事故が起こっていました。

googlecar

結局は地道な努力が問題を解決する
 客観的に見た場合、グーグルの14件という結果はそれなりの好成績といってよいでしょう。実験段階でこのレベルの成果を上げていれば、実際に自動運転が実用化された時には、平均的な事故率を下回っているかもしれません。

 自動車の運転には人の命がかかっていますから、平均値と同じだからといって簡単に許容されるべきではないという意見もあるかもしれません。しかしながら、自動運転が一般的になれば、泥酔した状態で子供の列に突っ込むといった悲惨な事故は回避することができます。それだけでも、ITを導入した意味があると考えることも可能です。

 こうした新しい技術を発展させていくには、実験を繰り返し、その有効性や危険性について一つ一つ検証していく以外に方法はありません。地道な努力以外に王道はないのです。その点において、これまでかなりの数の公道実験を繰り返してきた米国勢の優位性は高いと考えられます。

 一方、日本では公道での実験がなかなか許可されず、自動車会社各社は基本的な技術があっても、現場でのノウハウを蓄積できない状態にあります。

 これまで、日本人は机上の空論よりも、現場での地道な努力の積み重ねを得意としてきました。トヨタは今でこそ世界的な自動車メーカーですが、戦後間もなくは、すぐ壊れてしまう「危険な車」しか生産することができない三流メーカーでした。
 しかし同社は、自動車という当時のハイテク技術に対し、危険を承知の上で、何度も何度も試験走行を繰り返し、改善を重ねてきました。現在のトヨタの地位はこうした努力の蓄積の上に成り立っています。
 
 最近の日本人はこうした地道な努力を軽視しがちです。むしろ米国の方が、コツコツと経験を積み重ね、着実に成果を上げているように見えます。

 確かに、自動運転は危険が伴うものですが「危険だ」「危険だ」と叫んでいるばかりでは状況は改善しません。同じようなことがドローン(無人機)やロボットにも当てはまります。わたしたち日本人は、新しいものに率先してチャレンジし、現場の知恵を大事にしてきた本来の姿をもう一度見直すべきでしょう。

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