加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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トヨタが税金を払っていないという話題から見えてくるもの

 

 トヨタ自動車が過去5年間法人税を払っていなかったことが大きな話題になっています。このケースは税の問題を考える上でいろいろと重要な視点を我々に与えてくれます。

トヨタはなぜ税金を払わなくて済むのか?
 この話題が広まるきっかけになったのは、トヨタ自動車の決算発表です。同社の豊田章男社長が、ようやく税金を払えるようになったという説明を行い、この発言を共産党議員がネット上で取り上げたことから、一気にネットに拡散しました。

 トヨタは2014年3月期の決算で過去最高益を出しているのですが、確かに過去5年間にわたって法人税を払っていません。それは同社が節税を徹底して行っているからです。

 もっとも大きいのは、欠損の繰り越しです。法人税のルールでは、損失を出した場合には、最大で9年間、翌年以降の利益の80%までを利益と相殺することができます。同社は2009年に4000億円の赤字を出していますから、この分は翌年以降の利益の一部と相殺が可能です。

 しかし同社は、2010年以降、2000億円、4000億円、2800億円と連続して利益を出していますから、欠損の繰り越しだけでは、税金をゼロにすることは不可能です。おそらく、このほかに、研究開発費の控除や受取配当金の益金不算入など、いくつかの優遇税制をフル活用したと考えられます。

 もちろん、節税はまったくの合法ですので、このことをもってしてトヨタを批判するのはスジ違いといえるでしょう。しかし、トヨタのような大手の製造業には、他の業種やベンチャー企業からみればびっくりするような優遇税制が適用されているのも事実なのです。

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法人減税の問題は税率にあらず
 日本には、「租税特別措置」を始めとする優遇税制が無数にあります。租税特別措置の適用を受けた件数は、2012年度は約132万件あり、全体の適用金額の合計は4兆4000億円にも上っています。

 全体の4分の1が製造業と建設業で占められており、各項目においてはさらに特定企業に適用が集中するケースが多くなっています。例えば、試験研究費に関する税控除では減税額の95%を上位10社が占めていました。

 優遇措置の適用を受けたい業種は積極的なロビー活動を行うことになるため、租税特別措置は、政治的利権の温床になりやすく、以前から批判の対象となってきました。しかし、適用を受けた企業にとっては、この特権を当然のことながら手放したくありません。経団連では、租税特別措置の撤廃に対して否定的見解を示しています。

 また自動車業界に対しては、リーマンショック以降、業績立て直しのため、エコカー減税など1兆円を超す巨額の税金が投入されています。トヨタは国民の税金で支えられているというのも事実なわけです。

 トヨタは財界のリーダーとして、消費税の導入に対して積極的な姿勢を示すなど、政策立案にも深く関わっています。その点からすると、いくら合法的な節税とはいえ、一部の納税者の反発を買う可能性はあるわけです。

 現在、政府では法人減税が議論されていますが、税率を引き下げる代わりにこうした優遇措置を廃止しようという声も上がっています。

 法人減税の問題は、税率をいくらにするのかという問題よりも、こうした優遇措置がどれだけ廃止されるのかの方が、実は重要な課題なのです。

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