加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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「粛々と」は上から目線?使わない方がよい言葉とは

 

 沖縄の米軍普天間基地の移設問題をめぐって「粛々」という言葉が物議を醸しています。言葉ひとつを取り上げるのは過剰反応だという声もありますが、人は言葉に敏感に反応する生き物であるのも事実です。対人関係を考えた時、わざわざ使う必要のない言葉というものは、やはり存在します。

責任回避的なイメージがつきまとう
 「粛々と」という言葉が大きく取り上げられたのは、沖縄県の翁長知事が、菅官房長官との初会談で、「(粛々という言葉について)上から目線で、県民の心は離れ、怒りは増幅していく」と批判したことがきっかけです。菅氏は「不快な思いを与えたとすれば、今後は使わないようにする」と述べています。

 「粛々と」は、静かにという意味の言葉ですが、実際にこの言葉が使われる場面というのは、あまりよいニュアンスではないことがほとんどです。

 外からの雑音に惑わされず、自分たちのやるべきことを進めていく、という感じになりますから、沖縄県民に誠意を尽くして説明するというニュアンスとは正反対になってしまいます。翁長知事がこれを「上から目線」といったものと思われます。

 この言葉には、面倒なことから逃れたいが、自身の権威は失いたくないという小役人的なイメージがどうしてもつきまとってしまいます。菅氏は意識してこの言葉を使ったわけではないでしょうが、政治家としてはやはり適切ではなかったといえるでしょう。

 同じような言葉に「遺憾である」というものがあります。純粋には残念だという意味になりますが、これを使っている人は、基本的に「自分は謝りたくない」というオーラが全面に出ていることがほとんどです。責任逃れをする公務員が好んで使う言葉であることからも、このニュアンスがよく分かると思います。

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言葉遊びで交渉結果は変わらない
 こうした言葉遊びは、言葉尻が問題となる狭い世界ではある程度有効なのかもしれませんが、基本的にはなるだけ使わない方がベターでしょう。いくら言葉遊びをしたところで、こうした姿勢では、相手に誠意は伝わらないからです。誠意が伝わらなければ、結局のところ、どのような言葉を使っても結果は同じでしょう。

 下手に謝ってしまうと相手が過剰に要求してくるのではないか?そう考える人もいるかもしれません。

 確かに裁判など、キーワード一言について言った言わないが問われるような状況なら話は別です。しかし、政治やビジネスなど一般的な交渉事の世界では、過剰な要求が来たら、キッパリと断るだけですから、そういった心配は無用です。

 むしろ、言葉尻にばかり警戒していると、何か後ろめたいことがあるのではないかと勘ぐられ、逆に不利になる場合もありますから要注意です。

 交渉事は、交渉が始まる前からほぼ結果は決まっています。ふっかけ、慇懃無礼、威圧的な言い方といった各種テクニックは、その中でわずかな有利不利を決めるに過ぎません。

 人とのコミュニケーションは、自身の気持ちを率直な言葉で語ることに勝る方法論はありません。これはどんなにスケールの大きな交渉になっても基本は同じです。

 「遺憾です」「粛々と」など責任回避的な言葉や、過剰な謙譲語などはできるだけ使わないようにした方が、結果的にコミュニケーションや交渉においては有利な立場に立つことができるのです。

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