加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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高価な軽自動車が出てくる理由は「日本経済」

 

 このところ、価格の高い軽自動車が目立つようになっています。中にはフル装備すると200万円近くするモデルもあります。本来、軽自動車は価格が安いのウリだったのですが、自動車の市場に何が起こっているのでしょうか?

購買力の低下が軽自動車へのシフトを促した
 ちょっと前までは、1500ccクラスの価格は150万円程度、軽自動車は100万円程度で買えるという感覚でした。今でも100万円クラスの軽自動車は存在していますが、全体的な価格は上がっているというのが現実です。

 特に目を引くのが、最上級グレードの価格でしょう。昨年12月に発売された「ムーヴ」の最上級モデル180万円近い価格設定となっていますし、同時期に発売となったホンダの「N-BOX SLASH」も最上位モデルが190万円という価格設定です。

 こうした価格の高い軽自動車が出てくる背景には、日本経済の状況が大きく関係しています。日本はデフレと実質的な賃金下落が続き、消費者の購買力は低下する一方ですから、価格の安い軽自動車への需要は年々高まっています。
 国内市場に限って言えば、新車販売台数の中で軽自動車が占める割合は4割に達しており、軽自動車は今や主力商品といってもよい存在でしょう。

 しかし、自動車メーカー側はそれでは困ってしまいます。軽自動車は単価が安く、売上高も利益も小さくなってしまうからです。

 このため、軽自動車が人気ということであれば、その中で、高級モデルを用意し、なるだけ単価を上げ、売上高と利益率を維持しようとします。その結果、軽なのに高級仕様というモデルがたくさん出てくることになってしまったわけです。

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今後は自動車だけでなく、他の分野にも波及する?
 この現象は、日本と他の先進国との間に経済的な格差が生じきていることの裏返しです。もっとハッキリ言えば、日本が貧しくなっていることがこうした状況を生み出しています。

 日本にいると実感が湧きませんが、ここ10年で日本以外の先進国はGDPの規模を1.5倍程度に拡大させています。経済は相対的なものですから、逆にいえば、日本は相対的な経済規模が10年で3割以上縮小してしまったわけです。

 しかし、自動車は典型的なグローバル産業ですから、自動車の販売価格は世界経済と同じペースで上昇します。米国における新車の平均販売価格はここ10年で1割近く上がりましたが、米国が主戦場であるトヨタの平均販売価格もここ10年でやはり1割上昇しました。

 そうなってくると、日本人が買える車のグレードは当然下がることになり、軽自動車に人気が集まるわけです。人気が集中する軽自動車の中で、何とか単価を上げようという試みの一つが高級化路線ということになります。

 自動車は非常に単価の高い商品ですから、経済力の低下で、いい物が買えなくなるという現象がいち早く顕在化してきました。
 しかし、今後、円安が進展すれば、あらゆる分野で自動車のような現象が起こってきます。本来は、痛みを伴う改革を実施して、再び成長軌道に乗せるのがベストな選択なのでしょうが、現在の日本の雰囲気ではそれも難しいでしょう。

 こうした状況が今後、長期間にわたって継続することはある程度覚悟する必要がありそうです。

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