加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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トヨタの新役員人事は要注目

 

 トヨタ自動車が新しい役員人事を発表しました。外国人や女性を積極的に登用するなど、いわゆるダイバーシティ(多様性)を意識した内容が注目を集めていますが、もっと重要なことがあります。
 それは、日本型経営を維持しつつ、グローバル基準のコーポレートガバナンスに準拠した取締役会の構成です。

ガバナンスが不在だった日本企業
 これまで日本の会社はコーポレートガバナンスの体制が不十分だといわれてきました。コーポレートがバンスは、株式会社の運営において、所有と経営と執行の分離を明確にし、株主利益をしっかりと確保するための仕組みのことを指します。

 日本の経営者は従業員からの内部昇格が圧倒的に多く、株主から経営を委託されたという意識があまりありません。自分を社長に引き上げてくれた前社長や同僚の方を向いて経営を行ってしまう人が多いのです。

 これが事実上の制度として定着してしまったのが、いわゆる株式の持ち合いです。株式を持っているということは、その会社の経営権の一部を持っていることと同じです。お互いに会社の株式を持ち合ってしまえば、相互の経営に口を出す人はいなくなりますから、経営者が自由に会社を采配できるわけです。

 しかしこうした体制は経営者のモラルハザードを招きます。誰からもチェックされない経営者が、健全な経営を続けることは困難であり、それを防ぐ体制ができていない会社には国際的な機関投資は投資しません。

 日本の株式市場は、もはや短期的な利ざや稼ぎの投資家ばかりなのですが、その原因のひとつが、不健全なガバナンス体制にありました。
 アベノミクスでは、ガバナンス改善が盛り込まれ、東証の上場ルールにもこれが適用されることになりました。このため各社がガバナンス体制の強化に乗り出す結果となったわけです。

toyotajinji

形式ではなく実質が重要
 欧米企業では、このあたりの基準はかなり厳しく、取締役会のメンバーは社長以外はすべて社外役員というところも少なくありません。しかし、日本の場合、経営者を全員会社とは無関係の外部の人にすることについては、抵抗感もありなかなか受け入れにくい状況です。

 その点において、今回のトヨタの役員構成は、注目すべき内容といえます。

 今回発表された取締役候補者は全部で12名なのですが、このうち3名は社外取締役となっています。残りは社内からの登用ですから、数の割合としては、社内の方が圧倒的に多いことになります。

 しかし重要なのはその役職です。取締役候補者は、広報担当の専務役員である早川茂氏以外は、すべて代表権を持った副社長以上の人物で構成されているのが分かります。

 代表権を持った副社長ですから、日々の仕事に関与する割合はかなり低いと考えられます。つまり、早川氏以外は、基本的に経営の仕事に専念することになるため、経営と執行はほぼ明確に分離されることになるわけです。これで経営と執行を分離するという当初の目的はある程度達成が可能ということになります。

 また、日本の会社にありがちだった執行側の上下関係が取締役会に持ち込まれるという弊害についても、回避することができると考えられます。

 これまで、日本企業の取締役会のメンバーを見ると、専務取締役、常務取締役、取締役部長という社内の上下関係を表す肩書きがズラズラと並んでいます。これでは、執行側の上下関係がそのまま取締句会に持ち込まれてしまうため、本来の意味での取締役会は機能しないことになります。

 この部分についても、代表権を持った副社長以上に限定することで、ある程度対等な議論を担保することが可能と思われます。
 ガチガチの欧米型にこそなっていませんが、トヨタはコーポレートガバナンスの本質的な意味をよく理解しているようです。この形であれば、海外の投資家も十分に納得するはずです。

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