フリーアナウンサーの梶原しげるさんが面白い話を披露していました。グルメ番組を制作するテレビマンが、本当にうまい店を見つけるためのコツとしてあげたのが「ある3大禁句を使っていないこと」だという内容です。
プロならば出来ていて当たり前のこと
要注意な3つのキーワードというのは、「こだわりの料理」「旬の食材」「伝統の味」です。要するに、この3つは、腕の立つ料理人であれば、当然に身につけているものであり、あえて宣伝する材料にはならないという意味のようです。
逆にこの部分しかウリがないようであれば、その料理についても少し疑ってかかった方がよいという解釈になります。
あくまでこれは主観的な判断基準ですし、チラシやパンフレットにどのような記述をするのかについては、料理した本人とは関係ないことかもしれません。
このキーワードが入っていてもおいしい店はいくらでもあるといった話をし始めるとキリがないでしょう。あくまで、この判断基準が示す本質的な意味を重視した方がよい話だと思います。
ただ、この判断基準は、それなりに本質を突いており、ビジネスや芸術など、他の分野にも応用が可能だと筆者は考えます。
例えばビジネスの世界を例にとってみましょう。3つのキーワードは、以下のように置き換ることができます。「こだわりの料理」は「仕事に対するこだわり」に、「旬の食材」は「常に新しい取り組みを行うという姿勢」に、「伝統の味」については「仕事の基本」といったところになります。
仕事に対してこだわりを持ち、新しい取り組みを欠かさず、基本を身につけている。どうでしょうか? 確かに仕事のプロフェッショナルとしては、当たり前の内容であることが分かると思います。逆に、これらのうち、どれかが欠けているようでは、その人の市場価値については疑う必要があるでしょう。
ビジネスの世界も基本的には同じ
料理人をはじめとする職人の世界や、スポーツ、芸術などの分野では、こうした不断の努力や、最低限、身につけておくべきスキルについて、あまり話題に出てきません。
スポーツ選手が、常に黙々と基礎トレーニングを積み重ねるのは当然のことであり、それ自体が賞賛の対象となることはないのです。ピアニストが、毎日、毎日、基礎的なレッスンを繰り返すことは当たり前のことです。プロである以上、それは当然のことであり、プロとしての成果は、その先にあるもので評価されるからです。
ピアノが上手く弾けない人はピアニストになれませし、スポーツがあまり得意でない人がプロスポーツ選手にはなれません。料理が下手な料理人もほとんどいないでしょう。しかし一般的なビジネスの世界では、あまり得意でなくても、何となくその仕事を続けている人は結構多いと思います。
一般的な仕事は芸術やスポーツとは異なりますから、まったく同じに比較することはナンセンスかもしれません。しかし、ビジネスの世界においても、高い成果を得ようと思うのであれば、やはり職人や芸術家、スポーツ選手と同じようなマインドが求められるはずです。
そうであるならば、仕事ヘのこだわりは最低限の基準であり、こだわりがあることについて自己満足してはいけないということになります。基本を身につけることや、常に新しい方法を模索することについても、当然のこととして受け止める必要があります。
その上で、どんな成果を上げることができたのかで、本当のプロフェッショナルとしての評価が決まることになります。ちょっと厳しかもしれませんが、本気で仕事に取り組もうと思っているのであれば、この位、自分に厳しくてもよいのではないかと思います。