加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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中国はどこまで軍備を拡張するのか?

 

 中国政府の軍事費が増大していることが問題視されています。隣国の日本としては気になるところですが、中国はどの程度、軍備を拡大できる余地があるのでしょうか。

経済成長を超えるスピードで軍備を拡張
 中国政府は2015年3月5日、全人代(全国人民代表大会)において、2015年の国防予算を発表しました。中央政府分の国防費は、前年比10.1%増の8867億元(約16兆8500億円)となっています。これは日本の約3倍の規模です。

 中国はこのところ経済成長が鈍化しており、今年の全人代では、2015年の経済成長目標を7%と設定しました。つまり、中国は経済成長を上回る伸びで軍事費を増大させているわけです。

 中国の軍拡については、米国や日本は、透明性の確保が必要という観点から、懸念を表明しています。
 中国政府は、軍事費の拡大について、独自で兵器開発を行う必要があることなどを理由に妥当性を強調しています。また、中国は、南シナ海や東シナ海における海洋権益の確保を主張していますから、そのためには一定の軍拡が必要という立場のようです。

 中国の軍備はかなり近代化が進んできていますが、まだ旧式の装備も多いといわれています。中国は、基本的に装備の多くを近代化できるまで軍拡をやめないでしょう。

 日本としては、中国の軍事力が増大することは望ましくないわけですが、現実問題として、中国が今後、どの程度、軍備を拡大できる余地があるのか知っておく必要があります。

 一国が軍事費にかけられる最大金額というのは、その国のGDP水準でおおよそ決まってくることが知られています(北朝鮮のように国民を飢えさせてもよい国は別です)。数%というのがおおよその相場です。

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基本的に軍事力はGDPに比例する
 例えば、米国の軍事費は78兆円と日本の国家予算並みの規模があるのですが、GDPも2000兆円ありますから、軍事費のGDPに対する比率は約4%ということになります。
 ロシアは軍事大国というイメージがありますが、経済的には小国であり、軍事費も思った程多くありません。ロシアの軍事費は約9兆円ですがGDP比でいくと約4.5%になります。つまり、軍事費にかけられるのはこのあたりが限度というわけです。

 一方、日本はGDPが約500兆円で防衛費が5兆円なのでGDP比は1%です。中国の2015年のGDP予測は1300兆円程度ですから、今回発表された国防費のGDP比は1.3%ということになります。中国は絶対値が大きいですから、すでにかなりの軍事大国なのですが、GDP比という観点では、中国はまだまだ軍事費を拡大できる状況にあるのです。

 中国の実際の国防費はもっと多いという説もあります。すべての関連支出を合わせると公表値の2倍を超えるとの見方もあるようです。しかしそれでも、GDP比の4%まではまだ余裕ありますから、その気になれば、さらに軍備を拡大できるわけです。

 中国は、内政上、様々な問題を抱えており、現実にここまで軍事費を拡大することは不可能と考えられます。しかし、潜在的には、これだけの余力があるこということをわたしたち日本人は知っておくべきでしょう。

 現代の戦争は、ハイテク化が急速に進んでおり、その国の経済水準との相関がますます高くなっています。中国に対する接し方にについてはいろいろな意見があると思いますが、もし日本が本気で中国の軍事的脅威に対抗するのであれば、日本は目指すべき経済成長のレベルを根本的に見直す必要があると考えられます。

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