加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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情報経路が変わると情報の質も変わる

 

 前回は、ネットの普及で「知」のあり方が変わったという話をしましたが、今回もそれに関連した話題です。デジタル・ネイティブ時代においては、情報がやり取りされるルートも変わってくるのですが、これによって情報そのものが変化する可能性があります。古い世代の人も新しい世代の人も要注意でしょう。

初期のネットは、完全に紙ベースの世界だった
 これまで新聞や雑誌は、表紙やもくじ、あるいは誌面全体を最初に見ることを想定して作っていました。新聞記事については大きさやその位置について明確なルールがあり、重要度などによって、大きさと場所を変えています。
 また、雑誌の表紙やもくじにも、文字の大小があり、必然的にそこでは、情報に重み付けをするための役割が期待されていたわけです。

 基本的に旧来メディアの多くは、その媒体を見ようという意思のある読者であることが大前提です。スポーツのことが書いてあるのか、料理のことが書いてあるのか、経済のことが書いてあるのか、まったく知らずに経済誌を手に取るということはあり得なかったわけです。

 ところがネットの場合は違います。正確にいうと、最近のネットは違いますということになるでしょう。
 ネットの黎明期は、基本的にネット・メディアも、既存メディアの作り方を踏襲していました。つまり目的を持った読者がトップページから入ってくることを想定し、トップページの配置をあたかも、既存の新聞や雑誌のように作り込んでいました。つまり情報の体系化ということになります。

 Yahoo!のレイアウトがまさにそうだったのですが、完全に既存の紙媒体の置き換えだったわけです。

 しかし、検索エンジンがロボット型になり、紙のコンテンツをそれほど使っていない層がネットの中心になると、この図式は大きく変わってきます。

johokeiro

デジタル時代は閲覧者がランダムにやってくる
 検索エンジンの検索結果からやってくる閲覧者は、そのサイトがどのようなサイトなのか事前の予備知識はありません。慣れてくれば、検索結果が表示されている段階で把握できるようになりますが、多くの利用者はそうではないでしょう。

 ニュースサイトなのか、個人のブログなのか、官庁の情報提供サイトなのかは、閲覧者は事前には分からないのです。そうなってくると、情報に重み付けし、体系化を行って、トップページから目的のコンテンツに誘導する従来型のレイアウトにはあまり意味がなくなります。

 むしろ検索エンジンからランダムにやってくる閲覧者を前提にコンテンツを作成した方がよいという判断になります。新しいニュースサイトの多くが、タイムライン型(時系列にタイトルが並ぶ形式)の画面になっているのは、こうした理由からです。トップページそのものに大きな意味がなくなったのです。

 これは情報のルートに関する問題ですが、情報経路が異なると、微妙にそれは情報の内容にも影響してきます。検索エンジンからのランダムな流入を重視するということになると、見出しの付け方も変わってくるのです。

 新聞や雑誌であれば、ある程度の予備知識がありますから、奇抜なタイトルをわざわざつける必要はありません。逆に少し気の利いたタイトルなどの方が好まれるでしょう。

 しかし、ネット空間からの閲覧者を獲得するためには、まず見出しで興味を持ってもらわないと、そもそものスタート地点に立てません。その結果、単純化した主張を前面に出した見出しや、思わせぶりな見出しが並ぶ結果となります。

 ニュースサイトのコメント欄を見てみると面白いことがわかります。コメントを書き込む人の結構な割合が、コメントする記事をまったく読んでいません。その代わり、タイトルからイメージできる結論がすでに頭の中で出来上がっており、それを前提にコメントを書いているのです。

 そうなってくると、コンテンツを書く側は、予定調和的に想定される内容にするか、読んでみると実は意外なことが分かるという内容にするのか選択を迫られます。情報の経路が、情報の内容に影響を与えているのです。

 ネットでニュースなどを検索する場合には、こうした事情が存在することを前提に、情報を選択していく必要があります。
 情報経路が変わることで、情報そのものが180度変わるということはありませんが、経路の変化は質的な変化をもたらすことになります。この特徴はよく理解しておいた方がよいでしょう。

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