加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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ギリシャの革ジャン財相が、ホテルカリフォルニアを引き合いに出した理由

 

 債務問題をめぐるEU(欧州連合)とギリシャの交渉は、とりあえず4カ月の支援延長が決まりましたが、大方の予想通り、根本的な解決策は見いだせない状態となっています。
 今回の一連の交渉では、革ジャンに真っ青なシャツという奇抜なスタイルで交渉の場に臨む、ギリシャのバルファキス財務相の発言に注目が集まりました。

ギリシャはまるでホテルカリフォルニア
 バルファキス財務相は、以前からギリシャはユーロ圏にとどまりながらデフォルト(債務不履行)すべきだとという持論を展開してきました。
 ただユーロ圏については、ポジティブに考えているわけではなく、ユーロ圏におけるギリシャは、ホテルカリフォルニアのようだと述べています。

 ホテルカリフォルニアは1970年代、全世界的にヒットしたロック・グループ「イーグルス」の名曲で、米国社会の黄昏を歌ったものです。
 
 歌の中で主人公は、旅の途中で立ち寄った現実とも空想ともつかないホテルカリフォルニアで、退廃的な日々を過ごすことになります。歌の最後は、「受け入れるしかない」「いつでもチェックアウトできるが、決して、ここから逃げることはできないんだ」という謎めいた一節で終わります。

 この歌は、ベトナム戦争や経済の低迷など、深い迷宮に迷い込んでしまったかのような、当時の米国社会を象徴していると理解されてきました。

 これを現在のギリシャにあてはめるならば、本来、参加すべきではなかったユーロに参加してしまった以上、もうそこから逃れることはできないという意味になります。
 つまりユーロ圏という制度そのものが、迷宮であり、一種の共同幻想であると痛烈に皮肉っているわけです。

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成熟した諦観の概念はギリシャ国民に理解されるか?
 バルファキス氏は型破りな経済学者で、活動家だった父親とフェミニズム運動をしていた母親の下で育ちました。服装もそうですが、初の閣議には大型バイクで乗り付けるなど、体制に迎合しないスタンスを貫いています。
 年齢は53歳ですから、思春期の時代にホテルカリフォルニアを聴いていたはずです。当時の、厭世的な雰囲気は、彼の思想の形成に大きな影響を与えたのではないかと思います。

 バルファキス氏は、ユーロ圏残留を前提にしながら、その中で、ねばり強く交渉を行い、できるだけギリシャに有利になるよう、支援条件を変えていくつもりなのかもしれません。

 ただ、こうした戦略がうまくいくのかは何とも言えません。その最大の理由は、バルファキス氏の考えとギリシャ国民の考えとの間に乖離が生じる可能性があるからです。

 バルファキス氏の発言などから考えると、彼には一種の諦観があるように思われます。これがうまく作用すれば、交渉段階で、どのようなやり取りがあったにせよ、最終的には、いわゆる大人の解決が可能となるでしょう。

 しかし、ギリシャ国民にこうした成熟した諦観があるかどうかはまた別問題です。下手に譲歩をしてしまうと、国民から猛反発を食らってしまう可能性も考慮に入れる必要があります。そうなってしまうと、バルファキス氏にとっては、進むも地獄、戻るも地獄ということになってしまいます。

 もしかしたら、バルファキス氏はそうなることをすでに予想しているのかもしれません。ホテルカリフォルニアを引き合いに出したのは、ギリシャのことではなく、もしかしたら自分自身のことかもしれないわけです。

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