加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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20年以上にわたって繰り返される、親の収入と学歴に関する論争

 

 東大生の親の6割が年収950万円以上というツイッターの投稿がネットで話題となっているようです。一部の人には、驚くべき事実なのかもしれませんが、東大生の親が高収入だというのは、実は20年以上も前から、何度も話題になっていることで、特段目新しいことではありません。

 筆者はむしろ、この話題が20年以上も、同じ文脈の中で語り続けられている現実の方に、むしろ驚きというか、脱力感を感じてしまいます。

東大生の親がお金持ちであることの何が問題視されているのか?
 この投稿は、教育社会学者の舞田敏彦氏が行ったものです。舞田氏の調べによれば、東大生の57%が親の年収が950万円以上だったそうです。40代から50代の世帯のうち、950万円以上の年収がある世帯の割合は21.8%なので、東大生の親は突出して金持ちだということになります。

 これは公的な統計データから導出したものなので、かなり確度の高い数字と考えてよいでしょう。舞田氏は、幼少期からの通塾や早期受験をはじめとした、教育投資の差が出ている可能性が高いと指摘しています。

 ただ、この結果自体は、特に目新しいものではありません。20年以上も前からメディアでは何度も何度も指摘されてきたことです。
 今も昔も、一流大学の学生の親は高所得者が多いというのが現実です。高所得者は金銭的に余裕があるので、子弟に対して多くの教育費をかける可能性が高く、こうした結果になることは容易に想像ができます。

 この投稿が話題になっているのは、一流大学の学生の親に高所得者が多いという現実が、格差社会をさらに助長すると考えられているからでしょう。確かに、高所得でないと高学歴を得られず、高学歴でなければ高所得を得られない、というのでは、格差が次の世代まで継続してしまう可能性が出てきます。

 しかし、これらの議論ですっぽりと抜け落ちている点があります。それは、一流大学を卒業した人と、そうでない人との間に、これほどの格差を生じさせる社会制度そのものが、本当に妥当なのかという問題です。

 一流大学の学生の親がお金持ちであることについて、肯定的に捉えている人も、否定的に捉えている人も、一流大学を出ると、自動的に一生涯、高い所得を得るという現実について当然視しています。そうであるからこそ、これを格差問題と見なしているわけです。

toudaiokane

学業と仕事の成果には緩い相関がある
 学業成績と仕事をこなす能力に、緩い相関性があることはよく知られています。特に新興工業国のように、単純な製造業を中心とした国ほど、学業成績がよい人ほど、上手に仕事をこなすことができるはずです。

 しかし、工業化の時代を通り過ぎた先進国では、複数の概念を組み合わせて新しい付加価値を創造するなど、単純な知識だけではなく知恵が求められるようになります。そうなってくると、学業成績と仕事の成果の相関性は以前より緩くなる可能性が高くなってきます。

 そのような時代にあっては、テストの1点、2点を争うのではなく、一定レベルの学業成績を持った人をスクリーニングした後、自由に競争させ、成果が上がった人を登用するというやり方を採用した方が合理的です。
 
 また、時代の変化が早いですから、10代の時に実施したペーパー試験だけで、一生の評価や報酬を決めてしまうのはナンセンスといえるでしょう。10年ごとに、新しい基準で競争を繰り返した方が、常に優秀な人材を発掘できるはずですし、その方が、多くの人にチャンスがめぐってきます。

 しかし日本の場合には、依然として低付加価値工業時代の人材選抜方法が主流です。このところ日本企業は国際的な競争力を急速に失っているのですが、50年も100年も世の中が変わらないことを前提にした人事制度なわけですから、ある意味でこれは当然の結果ともいえるのです。

 日本はすでに成熟国家であり、工業製品のコストを中国や韓国と争う立場ではありません。情報や知恵といった部分で高い付加価値を持たせることが重要であり、当然のことながら、人材登用のシステムもそれに合わせて変えていく必要があります。

 先進国において教育を受ける権利というのは、基本的人権の一つといってよいものです。余裕のある人だけが受けられるサービスではありませんから、あらゆる階層の人に門戸が開かれていることは最低条件です。

 しかし、いわゆる一流大学に行かないと高所得者にはなれないので、その試験を平等な環境で受けられるよう、制度を整えるというのは本末転倒な話です。
 大学はスキルを磨く手段の一つにしか過ぎません。大学がどこであれ、学業で磨いたスキルをフェアに評価し、登用していく仕組みを作ることの方がずっと大事ですし、結果的に、それが日本の国力を強くすることにもつながるはずです。

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