加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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トイレをシェアする米国のネット・サービスから考える

 

 米国ではネットでいろいろなモノをシェアするサービスが活発ですが、とうとうトイレをシェアするビジネスも出てきました。
 今後、日本でもモノをシェアするサービスは確実に伸びてくると考えられます。これは、日本の内需を拡大させる非常によいきっかけとなりますが、一方で、既存の法体系がこれを邪魔してしまう危険性もあります。

すでにあるものをシェアするのは、時代の流れ
 米国では、防犯上の問題から公衆トイレがあまり存在していません。ホテルや飲食店に入らないとトイレに行くことが難しく、出先でトイレに困っている人は少なくないのです。

 トイレをシェアするサービスは、自宅のトイレを有料で貸し出してもよいという人が登録し、トイレを利用したい人はアプリで最寄りのトイレを探し出し、お金を払ってこれを利用するというものです。

 米国では、家の修理や買い物、ちょっとした頼み事など、多くの仕事が事業者を通さず、ネット上の仲介サービスでマッチングされています。手数料があまりかからないですから、双方にとって都合がよいビジネスといえるでしょう。

 先進国にはすでにたくさんのモノやサービスがありますから、わざわざ新しく買うメリットがありません。米国の都市部ではカーシェアを利用する人がかなり増えてきており、日本でも一部の地域では積極的に利用する人が出てきています。

 人々のライフスタイルが多様化し、たまにしか使わないモノは、一時的に利用すればよいと割り切る人が増えたことも大きく影響しているでしょう。

 さすがに環境が米国とは異なりますから、日本でトイレをシェアするサービスが次々と登場するとは思えませんが、これまでシェアすることが当たり前でなかったモノまでその対象となる可能性は高くなっています。

 また、多少面倒でもいいので、とにかく安くサービスを利用したいというニーズも多く、こうした人々も、ネット上の仲介サービスを積極的に利用します。

 ヘアカットモデルを募集するネットの仲介サービスを見て、タダで髪を切ってもらうことは若年層にとってはかなりポピュラーなことですが、こうした動きはあらゆる分野に広がってくるでしょう。

toireshare

原則自由か原則禁止か
 こうしたネット上の仲介サービスが普及してくると、今ままで想像もしなかった分野がサービス対象となる可能性があり、最終的には、それが新しい付加価値を生み出し、国内経済を活発化させます。

 しかし、こうした動きが進展すると、いろいろとトラブルも出てきます。昨年3月、ネット上の仲介サービスを使って依頼を受けたベビーシッターが赤ちゃんを殺害するという痛ましい事件が発生しました。
 こうした事件は、あってはならないことですが、利用者の数が増えてくると、一定の割合で発生してしまうのもまた事実です。

 しかし、ここで、新しいサービスは危険だという話に単純化してしまうと、社会の進歩は止まってしまいます。

 これまでも日本では、新しいサービスが出てくるたびに、まずは法律で規制するということがよく行われてきました。
 確かに野放図なサービスの拡大について一定の歯止めは必要ですが、とにかく新しいモノはすべて規制するという発想では、革新性のあるビジネスは生まれてきません。

 ネットという便利なツールがある以上、モノのシェアが進むのは不可避と考え、その中でできるだけ安全に利用できる環境を整えるという前向きな発想が必要でしょう。

 そのためには、法に対する基本的な考え方を変える必要もあると考えられます。日本では法は国民の行動を規定する絶対的な「掟」ですが、本来の法は必ずしもそうとは限りません。まずは自由にやってみて、うまくいかなった場合に、利害を調整するのが法であるという考え方もあります。

 特に新しいモノやサービスにはこうした発想が重要でしょう。

 日本人が新しい技術やサービスについて躊躇している間に、外国企業がこれを実現してしまい、結局は、外国企業にお金払ってサービスを利用するというのでは、日本は損する一方です。
 わたしたちは、人間の理性や良心について、もっと信用してもよいのではないかと思います。

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