加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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日本の1人あたりGDP順位急落をどう見るか?

 

 日本の1人あたりGDP(国内総生産)の順位が急落しています。1人あたりGDPの順位が下がることは、何が問題なのでしょうか?

経済が成長していないというのは、世界的に見て異常なこと
 内閣府は昨年末、2013年度のGDP確報値を発表しました。それによると2013年における日本の1人あたりGDPは3万8644ドルとなり、OECD加盟国の中では19位となりました。前年は13位でしたから、大きく順位を落としたことになります。

 先進7カ国中では下から2番目という状況で、日本より下に位置しているのは、経済的に諸問題を抱えたイタリアだけですから、下手をすると、先進国クラブから脱落してしまう可能性も出てきました。

 1人あたりGDPは豊かさの象徴といわれます。かつて日本は、1人あたりGDPにおいて先進7カ国中トップでした。しかし、2001年から順位が落ち始め、2007年には、一旦、先進国で最下位に転落します。

 しかしこの時は、日本以外の国は、リーマンショック前のバブル経済の恩恵を受けていた面がありましたから、日本の順位が下がったのは仕方がないという見方が一般的でした。
 その後、リーマンショックによる他国の落ち込みで一時的に回復したものの、2013年には再び順位が急落するという事態になってしまったわけです。

 ここ数年、順位が回復したのは、円高が異常に進んだからです。1人あたりGDPの比較はドルベースで行われますから、円高になると日本は有利になるわけです。今回一気に進んだ円安で、ゲタを履かされてた部分がなくなってしまったというのが現実でしょう。

 順位が落ちた根本的な原因は、当たり前のことですが、日本経済が成長していないからです。

 過去10年の間に主要各国は、自国通貨ベースでGDPを1.3倍から1.5倍に拡大させています。しかし、日本はこの間、ずっと横ばいが続いてきました。これは世界的に見るとかなり異常な状況といってよいでしょう。

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精神的豊かさを議論する段階ではなくなった
 1人あたりのGDPの順位が下落しても、あまり気にする必要はないとの見解もありますが、現実はなかなかそうはいきません。

 1人あたりのGDPは、乱暴に言ってしまうと、日本人の平均年収と考えて差し支えありません。1人あたりのGDPが低下するということは、日本人の相対的な年収が下がることであり、外国から買うことができるモノの量や質が下がることを意味しています。

 非文明的な途上国でもない限りは、多くの国が、貿易によって生活に必要な物資を調達しています。特に日本の場合には、エネルギーや素材のほとんどを輸入に頼っています。ドルベースの1人あたりGDPが低下してしまうと、今まで買えていたものが、買えなくなってしまいます。

 最近、海外旅行をしたことがあれば、海外の物価が高いことに驚くのではないかと思います。これは為替の問題というよりも、日本の経済力が低下し、わたしたち日本人の購買力が落ちていることが原因なのです。

 特に影響が大きいのが、自動車、IT機器、医療サービスなど、国際的にどこに行っても価格が同じ製品やサービスです。これらは、国力が低下すると、国民が購入できる水準がそのまま低下してしまいます。

 日本が1人あたりGDPでトップだった時代には、物質的な豊かさだけなく精神的な豊かさについても考慮する必要があるとの議論が説得力を持っていました。しかし、残念なことに、物質的な豊かさすら失いつつあるというのが今の状況なのです。

 アルゼンチンなどの例を見れば分かりますが、ひとたび先進国から脱落してしまうと、復活することはほぼ不可能となります。経済を成長させるにはどうしたらよいか、わたしたちは、真剣に向き合う必要がありそうです。

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