加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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とうとう安倍首相が消費増税延期を決断。日本経済はどうなる?

 

 安倍首相が2014年11月18日、とうとう衆議院の解散と消費増税の延期を表明しました。来年以降は、厳しい政治日程が続きますから、長期政権を目指したい安倍政権にとっては、今解散に踏み切るのが有利と判断したものと思われます(大義があるかは別にして)。

 ただ、消費増税を延期するという判断は、ギリギリまで迷ったのかもしれません。最終的には、17日に正式発表となった7~9月期GDPの数字が背中を押したと考えるのが自然でしょう(少し前から、首相はこの数字を把握していたと思います)。

日本経済はかなり脆弱
 それにしても、年率換算でマイナス1.6%という今回のGDPにはかなり驚かされました。エコノミストなどによる事前予想の多くはプラス2.4%前後だったからです。数字がちょっと異なるといったレベルではなく、方向そのものが間違っていたわけですから、市場では大混乱となりました。

 GDPの各項目で下落率が大きかったのは住宅で、前期比マイナス6.7%となりました。また設備投資もマイナス0.2%となっており、企業マインドも冷え込んでいることが分かります。消費もプラス0.4%と低迷しました。プラスではあるのですが、前四半期が消費増税の駆け込み需要の反動で大きく下落していたことを考えるとかなり小さな数字です。

 また在庫の調整も大きく影響しています。在庫の動きだけでは景気の判断は難しいのですが、消費が非常に弱く、企業が売れ行き不振を警戒して在庫を減らした可能性があります。そうだとすると、結局は消費の弱さが原因と判断できるでしょう。とにかく公共事業以外は総崩れといった状況なのです。

 前四半期のGDPが悪かったのは、4月に実施された消費増税の駆け込み需要の反動であると説明されてきました。これまでの各四半期における実質GDPの成長率(年率換算)は、2013年10~12月期がマイナス1.6%、2014年1~3月期はプラス6.7%、2014年4~6月期はマイナス7.3%でした。

 7~9月期が大幅なプラスとなれば、全体としてプラスマイナス・ゼロとなりますから、駆け込み需要の反動だったと解釈することが可能です。
 しかし、4~6月期に続いて、7~9月期もマイナス成長ということになると、やはり、反動というだけで片付けることはできないでしょう。消費そのものが弱っている可能性が高いわけです。

 さらにいえば、駆け込み需要とその反動が大きいということ自体が、経済の脆弱性を物語っています。
 消費増税は今後、半永久的に続くわけですから、高額商品以外は駆け込みで買っても消費者はそれほど得しません。しかし、現在の日本では消費者に余裕がなく、こうした行動に走らせていると考えられます。

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インフレになる可能性はさらに高まった?
 10~12月期のGDPは、在庫調整などの関係で思ったより数値がよくなる可能性もあります。しかし通期のGDPが良くない結果になることはほぼ確定しましたから、とりあえず増税は延期して失速を最小限に抑えたいところでしょう。

 これまで安倍政権は積極的な公共工事で何とかGDPを底上げしてきましたが、極端な人手不足から、これ以上、公共工事を増やすことができなくなっています。財政による景気浮揚が期待できないとなると、安倍政権はとにかく物価目標を達成しようと、半ば強制的な物価上昇政策を進めていく可能性があります。

 消費増税の延期が発表された直後、19日に開催された政労使会議では、早くもその兆候が見て取れます。労使の間で、来年の賃上げの方針がほぼ確認されたのです。賃上げが行われることは労働者にとっては朗報のように見えますが、この状況ではそうとも言い切れません。

 実質的にGDPが低迷している時に、強制的に賃上げが行われると、企業は失った利益を回復しようと、さらなる値上げを検討する可能性があるからです。そうなってくると、値上げと賃金上昇のスパイラルとなり、インフレのスピードが加速してしまう可能性があります。

 インフレが加速してしまうと、せっかく賃上げになっても、消費者はそのメリットを享受することが難しくなってしまいます。選挙の結果にもよりますが、今回の消費増税の延期によって、日本がインフレになる確率はさらに高まったとみてよいでしょう。

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