加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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原油価格の大幅下落で米国の大量消費が復活?得するのは日本?

 

 原油価格の急速な下落が、世界の経済に大きな影響を与える可能性が出てきました。原油安に伴うガソリン価格の下落によって、米国の消費市場が大きく変わろうとしているのです。

ガソリン価格の下落で大型車の販売が絶好調
 これまで、省エネ志向から小型車に人気が集まっていた米国の自動車市場に異変が起きています。燃費が悪いとして敬遠されてきた大型車種の人気が復活しているのです。

 米国の10月における新車販売台数は前年同月比6.1%増の128万1313台となり、10年ぶりの高水準を記録しました。原油価格の低下でガソリン価格が大幅に下がったことで、販売に弾みがつきました。特にSUV(多目的スポーツ車)の販売が好調です。

 それだけではありません。車体が大きく、燃費が悪いという、米国車を象徴する車であったハマーH1が中古市場で再び人気となっているのです。かつての大量消費時代が復活するのではないかとの声も聞かれるくらいです。

 米国は世界でもっとも石油を消費する国です。リーマンショック前後は、新興国による需要の爆発的な増大から石油の枯渇が心配され、原油価格は1バレルあたり140ドルまで上昇していました。しかし、最近では、世界経済の減速傾向から原油価格は一気に下落しており、現在では70ドル台になっています。

 しかし、ここまで原油価格が下落したのは、世界経済の減速懸念からだけではありません。大幅な価格下落の背景には、米国のシェールガス革命があります。
 米国では安価なシェールガスの開発が一気に進んだことで、近い将来、すべてのエネルギーを自給できる見通しとなっています。これによって、石油が今後、大量に余ると懸念されているのです。

 世界でもっとも石油を大量消費していた国が、今度は世界最大の産油国のひとつになるわけですから、このインパクトは非常に大きなものがあります。

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産油国は減産せず、米国とガチンコの価格勝負
 サウジアラビアなど中東の産油国は、米国のシェールガスに対抗するため、価格勝負に出ようとしています。これまで産油国は、石油がダブつき気味になると生産量を減らし、不足気味になると生産量を拡大することで、原油価格を安定させてきました。

 しかし、今回はいつもとは状況が異なります。これまで石油を販売する先だった米国が、いきなり、ライバルになってしまったわけです。米国という最大の顧客を無くすわけですから、ちょっとやそっとの減産では対処できません。最終的に産油国は、米国のシェールガス企業と、ガチンコの価格勝負を挑むことにしたわけです。

 低価格競争に巻き込まれる米国のシェールガス関連企業は大変なことになりますが、一方で、多くの米国企業や消費者にとっては、願ってもない状況が訪れようとしています。原油価格が長期にわたって低下する可能性が高くなってきたからです。

 米国の消費市場は、原油価格と直結しています。原油価格が下がればその分、米国の消費は確実に増加します。大量消費を謳歌する、かつての米国の風潮が戻ってくるかもしれないのです。その兆候のひとつが、大型車の好調な販売動向というわけです。

 現在、世界経済は米国を除いて減速傾向にあります。米国も世界経済とは無縁ではいられませんから、景気の減速はやがて米国にも及んでくるという見方が有力でした。しかしここまで原油価格が下がってくると、必ずしもそうとはいえなくなります。

 原油価格の下落によって、米国の消費が刺激され、好調な米国経済が維持できる可能性が高まってきたからです。もしそうなれば、これは日本経済にとっても朗報です。日本の製造業は基本的に米国市場に大きく依存しているからです。

 日本ではなぜか米国の過剰消費に対して批判的な意見が多いのですが、これは少々ナンセンスです。米国のこうした過剰ともいえる消費の恩恵をもっとも受けているのは、ほかならぬ日本企業だからです。米国人がかつてのような大量消費に戻ってくれれば、私たち日本人が最も得をするのです。

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